広島・森島司 シャイな男が直訴したトップ下で輝き続ける

 2年前、俳優・竹内涼真が大ブレークした「過保護のカホコ」というドラマを見ながら、「あれ?誰かに似ている。見たことある」。そんな思いを持ちつつ、何気なくJ1広島のトレーニングを見ていた。

 「彼だ。モリシだ」

 どんな時も爽やかな笑顔でピッチを駆け巡る若者だ。

 「竹内涼真さんに似ていると言われない?」

 「え?なんすか?初めて言われたっす」

 はにかんだ。その笑顔が、テレビで輝いた俳優を彷彿(ほうふつ)とさせる。

 森島はシャイな若者だ。青山敏弘や林卓人のような情熱をあらわにすることはない。四日市中央工時代はキャプテンを務めたが周りをけん引するような声出しもできず、後輩を励ましたいと思っても副キャプテンにいつも先を越された。取材も頑張って受けるのだが、言葉がスラスラと出てこない。東京五輪を目指すU-22日本代表の招集時も「このタイミングで呼ばれるとは」とポツリ。「記者泣かせやな」と言われても、苦笑いで返すだけ。竹内涼真に似ていると言われても、テンションが上がるはずもない。

 ただ、このシャイな若者は、ここぞという時に自己主張する。2017年、退団するミキッチに直談判し、彼が身につけていた14番を受け継いだ。今季も「サイドではなくトップ下でやらせてほしい」と城福浩監督に主張。そのトップ下でACLでは3試合連続アシストを記録。アウェーのメルボルンビクトリー戦で公式戦初得点を決めると、中3日で行われた浦和戦で先発し1得点1アシスト、4得点すべてに絡んだ。

 世界的スーパースター・イニエスタが注目され、約3万人がエディオンスタジアム広島に集まった今月5日の神戸戦、森島は美しい直接FKのゴールを含む5得点に関与。「トップ下でやりたい」という主張に対する責任を取り続けている。

 今はまだ、竹内涼真に似ていると言われる立場だ。だがいずれ、そういう比喩はなくなる。「森島司はかっこいい」。容姿もプレーも含め、ヒーローになれる22歳である。(紫熊倶楽部・中野和也)

 ◆森島司(もりしま・つかさ)1997年4月25日生まれ。三重県出身。MF。背番号14。16年に四日市中央工から広島入団。17年の開幕戦でJリーグ初先発を果たし、同年にはU-20W杯日本代表にも選ばれる。今年5月22日のACL・メルボルンビクトリー戦でプロ初ゴール。同26日の浦和戦でJ初ゴールをマーク。東京五輪を目指すU-22日本代表にも選出された。175センチ、66キロ。

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