夢叶えたタノンサック グリーンツダジム本石会長初の世界王者!亡き小松則幸さんとの約束果たす
「ボクシング・IBF世界ライトフライ級王座決定戦」(19日、大田区総合体育館)
同級2位のタノンサック・シムシー(タイ)が同1位クリスチャン・アラネタ(フィリピン)を判定2-1で競り勝ち、空位だった新王者の座に就いた。19年4月からグリーンツダジムに所属し、本石昌也会長にとって就任11年で初の世界王者が誕生した。
最後の判定コールが告げられると、タノンサックは、セコンドに肩車され歓喜の雄たけびを上げた。うれし涙を流しながら「うれしいです。育ててくれた両親のため、家族のためにやりました」と喜んだ。
強打を誇るサウスポーのアラネタを恐れず、積極的に手数を出した。左に回りながら左ジャブだけでなく、飛び込んで右ストレートも果敢に放った。序盤は優勢だったが3回に暗転。打ち終わりに強烈な左フックを浴びダウンを喫した。
それでも「自分のミスだったが、それで集中力が高まった。切れずに次のラウンドに向かえた」と強打に押されながら粘った。愚直に手数を出し続け、僅差の判定勝ちにつなげた。
2日前に祖母が死去。「この日は祖母に捧げる試合でした。トレーナー、会長に感謝しています」とタノンサックにとって、待望の世界初挑戦だった。現IBF世界フライ級王者・矢吹正直(LUSH緑)の王座返上で巡ってきた好機。コロナ禍だった20年11月、当時のWBA同級スーパー王者の京口紘人への挑戦は京口の新型コロナ感染で幻となっていた。
本石会長は、幻の京口戦を「前日計量を終え、食事中に中止が告げられた。5年前、彼は泣き崩れた。それでも夢を諦めなかった」と新王者をたたえた。そして「やっと小松との約束をかなえられた。勝った瞬間、小松の顔が思い浮かびました」と、2009年4月に事故死した元東洋太平洋フライ級王者の小松則幸さんの名前を口にした。
本石会長「私はボクシング経験がない中、小松則幸が僕をこの世界に導いてくれた。きょうで亡くなって16年、やっと小松との約束をかなえられた」と、感慨深げに話した。
タノンサックは「会長とトレーナーの指示に従って、次も頑張ります」とキッパリ。さまざまな人の思いを背負い、リングに上がり続ける。



