田中恒成が現役引退 世界最速21戦目の4階級制覇などあまたの偉業残すも 失明の危機で決断「悔しいけど悔いはない」

 ボクシング前WBOスーパーフライ級王者で世界4階級制覇の田中恒成(29)=畑中=が4日、名古屋市内で会見し現役引退を発表した。「けががすべての原因です」と語り、右目網膜剝離を起こし、昨年の手術後も視界がゆがみ両目の焦点が合わなくなっていることを告白。試合をすれば失明の危険がある状態だと明かした。日本最速5戦目の世界奪取、世界最速21戦目の4階級制覇という偉業を置き土産に、ボクシングに別れを告げた。戦績は20勝(11KO)2敗。

 引退する現実を冷静に受け止め、言葉をつむいでいた田中が一度だけ声をつまらせた。3歳から二人三脚で歩んできた父・斉(ひとし)さんに言及した時だった。

 「約30年。何があっても一切ぶれず僕に人生を懸けてくれた。全てを懸けてくれたから、親の人生も背負っている感覚もあった。計り知れない感謝があります」

 目は、元々弱かった。デビュー直後にレーザー治療が必要な状態になった。急速に悪化したのは2020年12月、スーパーフライ級に転じ当時のWBO同級王者・井岡一翔(志成)に挑む直前から。以降、同級での4年間は常に目の不調に悩まされ5回以上の手術を受けた。最後の試合、昨年10月のカフ(南アフリカ)戦では「すぐ右目が見えなくなり、3回には光も消えた」という。

 右目が網膜剝離、左目は白内障。それでも再起するつもりだったが、何度もメスを入れた目には「失明」の危険も。現役続行を断念せざるを得なかった。

 世界5階級制覇、海外での試合-。心残りはたくさんある。だが、恨み言はなかった。「あの時こうしていればよかった、みたいなことが本当にない。悔しいけど悔いはありません」と、しっかり前を向いた。

 あるのは父、そして周囲への感謝だ。「畑中ジムに入ったからこそ、最速で世界チャンピオンになれた。ジムに関わった人、ジムの先輩、そして畑中会長に本当に感謝したい」。18歳でプロデビューして11年。最速記録を塗り替えながら光速で駆け抜けた。今後は未定。何らかのボクシングに関わっていく予定だ。

 ◆田中 恒成(たなか・こうせい)1995年6月15日、岐阜県出身。中京高で全国4冠。高校3年時の13年11月にプロデビュー。15年に国内最速5戦目でWBO世界ミニマム級王座獲得。16年に同ライトフライ級王座獲得。18年に同フライ級王座を奪取し、3階級制覇。24年に空位となっていた同スーパーフライ級王座決定戦を制し、日本男子3人目の4階級制覇。21戦目での達成は世界最速だった。身長165センチ。右ボクサーファイター。プロ通算20勝(11KO)2敗。

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