【長谷川穂積の拳心論】井上尚弥は「絶対」に近い選手 漫画でも描けないストーリー

 11回KOでバトラーを下し喜ぶ井上尚弥(代表撮影)
 4本のベルトを見つめる井上尚弥
 2回、バトラーのボディーを攻める井上尚弥
3枚

 「ボクシング・世界バンタム級王座統一戦」(13日、有明アリーナ)

 WBA・WBC・IBF王者の井上尚弥がWBO王者ポール・バトラーに11回KO勝ちし、史上9人目、アジア勢&バンタム級では初となる4団体王座統一を果たした。王座を一つずつ、すべてKOでの獲得は史上初。防御に徹するバトラーを崩すのに手間取ったが、11回に強烈な右ボディーからの連打でダウンを奪い決めた一戦を、元世界3階級制覇王者の長谷川穂積氏(41)が独自の視点で分析した。

  ◇  ◇

 4団体統一はバンタム級で初。それはこの階級が日本も含めて選手層が厚く、試合を組むのが難しかったからだろう。4団体を統一した井上選手を心から尊敬し、誇りに思う。

 ディフェンスに徹した敵を倒すのは本当に難しい。倒れないことを目標としている相手に、上を打って下を打つ。下を打って上を打つ。フック、ストレート、アッパーとあらゆる攻撃のバリエーションを繰り出した。

 相手のタイミングに合わせて戦ったと思えば、ラウンドを変えて自分のリズムに戻す。また変えて自分のテンポをずらす。攻撃し続けた11回に、一気にギアを上げたのは圧巻だった。4団体統一という記念すべき試合で、しっかりKO勝ちをもぎ取った。

 序盤から相手をサンドバッグのように思い切り打っていたが、あれは空振りするとバランスを崩すため、普通は怖くてできないもの。それだけの余裕があった。しかし、一方的な試合ではお客さんが面白くない。挑発したのも手を出させたかったからだと思う。

 観客席が3階まで埋まっていたのは本当に驚いた。強さだけでこれだけのファンを集めるのは、本物のボクサー、本物の王者だ。ボクシングに「絶対」はないが、井上選手は限りなく「絶対」に近い選手だと思う。

 普通は王者は挑戦者と戦うものなのに、彼は王者として王者と3度戦った。しかも一気に複数本のベルトを獲ったわけではなく1本ずつKOで獲っている。そんなボクサーはいない。漫画でも描けないストーリーを、彼はリアルで描いている。

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