記憶障害と闘うかつての天才ボクサー 愛娘に「どちら様ですか?」…涙の再会

 WBC世界フライ級王者・勇利アルバチャコフに挑戦した現役時代の渡久地氏(左)=96年8月26日、両国国技館
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 ボクシング「平成三羽ガラス」の一人で、元日本フライ級王者・渡久地隆人氏(49)が12日、TBS系「爆報!THEフライデー」に出演。現在、深刻な記憶障害に悩まされている様子が明かされた。

 渡久地氏は「ピューマ渡久地」のリングネームで88年にビクトリージムからプロデビュー。どう猛なファイトスタイルと強打でKOの山を築き、10戦目で日本王座を獲得。鬼塚勝也(協栄)、辰吉丈一郎(大阪帝拳)と並んで「平成三羽ガラス」と称され、熱狂的なファンを呼んだ。

 世界王座には届かず引退したが、01年に東京・東麻布に「ピューマ渡久地ボクシングジム」を開設。しかし、てんかんの発作を何度も起こし、記憶障害に悩まされるようになる。会長業務にも支障をきたすようになり、93年に結婚して06年に離婚した聡美さんにジム運営を託し、自身は名誉会長となった。

 療養のため16年には東京を離れて帰郷。沖縄県うるま市で暮らす祖母と両親の元で農作業を手伝うなどしている。だが自身の年齢も答えられず、散歩に出ると自宅が分からなくなるなど記憶障害は良くなるどころか深刻な状況を迎えていた。

 元妻の聡美会長との間には長女、次女、長男と3人の子どもがいる。渡久地氏の現状を知り、25歳の長女は5年間働いた会社を辞めて、父を支えるために沖縄に行くことを決断した。

 今年3月、渡久地氏の元を訪れ「パパ」と呼びかけるが、最初、渡久地氏は「はい?どちらさまですか?」と娘のことも分からない。何度も呼びかけることでようやく「分からなかった。ごめんね」と謝り、最愛の娘との再会に本当にうれしそうな表情を浮かべた。

 渡久地氏の現役時代、何度も勝利後のリングで抱き上げられた長女は「もう一回パパと一緒に思い出をつくりたい。忘れてほしくない。会った時、(父親が自身を)分からなかったのはつらい」と気持ちを伝える。娘の訴えに渡久地氏は「ありがとう」と涙を浮かべた。

 長女は渡久地氏がかつて撮りだめていた子どもたちの様子を撮影したホームビデオも持参。サプライズで呼んだ次女、長男とともに家族で過ごした日々を振り返った。「良かった。すごく。思い出しましたね」。かつての天才ボクサーは、幸せな日々を思い出し、穏やかな笑みを浮かべた。

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