怪物井上“判定勝ち”元世界王者を圧倒

 高校生史上初のアマ7冠を達成したルーキーが、元世界王者に大差の“判定勝ち”だ。来年1月5日にデビュー2戦目(後楽園ホール)を行うボクシングの東洋太平洋ライトフライ級9位・井上尚弥(19)=大橋=が12日、横浜市内の所属ジムで、元WBA世界スーパーフライ級王者・名城信男(31)=六島=と6ラウンドのスパーリングを行った。井上は2階級上の相手に終始優位に立ち、“怪物”の異名にたがわぬ実力を見せつけた。

 “怪物”がエンジン全開だ。名城陣営の希望で実現した豪華スパーリング。同門の元WBA世界ミニマム級王者・八重樫東とスパーリングを重ねている井上にとって、2人目の元世界王者との“対戦”だが「遠慮なくいけた」という井上が逆に格の違いを見せつけた。

 開始からスピード豊かな動きでプレッシャーをかけ続けて主導権を握り、正確なパンチを上下に打ち分け、名城を何度もロープ際に追い込んだ。5ラウンド以降は、動きの落ちた名城を圧倒。終了のアラームが鳴ると、ジム内にため息交じりの拍手が起こった。

 ジムの大橋会長も感心しきりで、「フルマークだね」と井上の大差の“判定勝ち”とジャッジ。「2階級上の元世界王者にプレッシャーをかけるなんて信じられない。次に世界戦やってもいいんじゃない?」と冗談も飛び出すほど絶賛した。

 名城は「相手にならなくて申し訳ないです」と脱帽。目の周りがうっすら赤く腫れるほどのダメージを受けていた。「すばらしい選手。スピードについて行けなかったし、上下左右に打ち分けて、つけいるスキがなかった」と最大級の賛辞。世界を知る男の立場から、「チャンスがあれば世界を獲れると思います」と太鼓判を押した。

 一方の井上は「すごい自信になります。他のジムの選手なので緊張感があって、精神的にも勉強になった」と涼しい顔。また、「スタミナがなくて攻めきれなかった」と課題を掲げるとともに、「スパーリングと試合は違う。もっと上を目指しているので、ここで納得しないでやっていきたい」と前を向いた。“怪物”は、まだまだ真価を続ける。

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