“怪物”井上、強烈4回KOデビュー!

 「ボクシング8回戦」(2日、後楽園ホール)

 “怪物”が伝説への第1歩を記した。史上初の高校生アマチュア7冠を達成した井上尚弥(19)=大橋=がプロデビュー戦(49キロ契約8回戦)で東洋太平洋ミニマム級7位のクリソン・オマヤオ(19)=フィリピン=に4回KO勝ち。試合開始から圧倒し、最後は左ボディーでマットに沈めた。87年7月の赤城武幸以来7人目、10代では初の8回戦デビューを白星で飾った。

 初陣にも“怪物”は堂々としていた。満員1900人の観衆が詰めかけ、NHKと民放各局が取材に訪れ、TBSは深夜に録画中継。会見場も用意されるなど、異例の注目の中で行われたデビュー戦。ワムの「フリーダム」に乗って入場した井上は、雰囲気に動じることなく開始から自分のペースで試合を進めた。

 KO負けのないタフガイのオマヤオに対し、距離を保ちながら鋭いジャブを突き刺した。正確な見切りと堅いガードで主導権を握り、1回にいきなり右のボディーストレートでダウンを奪った。その後は大ぶりのパンチをもらう場面もあったが、ペースが乱れることはなかった。4回に「何も考えず、流れで出た」という強烈な左ボディーでもん絶させて試合を決めた。

 快勝に「ホッとした。たくさんのお客さんの前でも緊張することはなかった」と笑みを浮かべたものの、「相手のラフなパンチをもらったり、ダメなところばかりだった」と反省。トレーナーで父の真吾さんも「よかった点はあまりない。逆に課題が見えたところがよかったところ」と辛口採点だった。

 実は、10日前にスパーリングで右こぶしを痛めていた。大事を取って試合までスパーリングは行わなかったが、この日の試合中にまた痛めたという。痛みに耐えながらの初陣だった。

 ジムの大橋秀行会長は「ありえない。あんなワンパンチで倒せるなんて。オレの比じゃない」と大絶賛。同会長は世界最速タイの3戦目での世界奪取をブチ上げていたが、「あのすごさを見れば、そんなことにこだわる必要はない。日本か東洋を獲るとか、手順を踏ませてからにしたい」と方針転換を示唆した。

 次戦は世界ランカー戦が内定。同会長は「来年1月に(元WBA世界ミニマム級王者)八重樫らを集め、大橋ジムのオールスター的な興行をやるので、そこで」と話した。“怪物”の次の一歩にも目が離せない。

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