【にしたん社長の人生相談 お悩みクリニック】管理職の役割は成果を出すだけでなく、部下が安心して働ける環境を守ること
にしたんクリニックなどを展開するエクスコムグローバル株式会社の西村誠司社長があなたの悩みに答えます。
【相談】 先日、業務上で行き違いがあり、若手の部下が取引先の役員を激怒させてしまいました。これまでにないほどのお怒りで、部長の私がすぐに謝罪に出向きましたが、お会いすることができませんでした。その後、おわびを受け入れていただきましたが、この役員の方は時々、このようにお怒りすることがあり、部下は精神的にもまいっています。パワハラにあたるので、社内であれば総務に相談しますが、社外となるとどこに相談したらいいかわかりません。この役員に対して部長として私から何か申し伝えたほうがよろしいでしょうか。昔から大変お世話になっている取引先ですので、今後も良好な関係を築くためにもアドバイスをいただければと思います。
【回答】 部長という立場で、取引先との関係、そして部下の心のケア、その両方を背負っておられる状況、とても大変だったと思います。文章からも、「取引先との関係は守りたい。しかし、部下も守らなければならない」という板挟みの苦しさが伝わってきました。
まず前提として、部下のミスによって取引先にご迷惑をおかけしたのであれば、管理職として謝罪に出向かれた判断は正しかったと思います。そして、おわびを受け入れていただけたという点については、まず一区切りついたと考えていいでしょう。
ただ一方で、「怒り方」の問題は別です。相手が役員であれ取引先であれ、人格を否定するような叱責(しっせき)や、必要以上に威圧的な態度が続くのであれば、それは単なる指導や苦言とは別の問題になります。近年は“カスタマーハラスメント”という言葉も広く認識されるようになり、社外からの過度な圧力についても、企業側が従業員を守る責任が問われる時代になっています。
とはいえ、長年の取引先であり、今後も関係を続けていきたいというお気持ちもよく分かります。ですから、ここで大切なのは「戦う」ことではなく、「境界線を丁寧に引く」ことだと思います。
私であれば、まず部下には「今回の件で必要以上に自分を責めなくていい」と伝えます。ミスへの反省は必要ですが、怒鳴られた恐怖まで背負わせる必要はありません。部下が萎縮してしまうと、次から報告や相談が遅れ、結果的に組織としてもっと大きなリスクになります。
そのうえで、取引先の役員に対してどうするかですが、今の段階で正面から「その怒り方は問題です」とぶつけるのは、現実的には得策ではないケースも多いでしょう。特に相手が感情的になりやすいタイプであれば関係がこじれる可能性があります。
ですので、伝えるとしても抗議ではなく、“今後より良い関係を続けるためのお願い”という形がいいと思います。たとえば、「若手も真摯(しんし)に反省しておりますので、今後は改善に向けてしっかり対応いたします」「至らぬ点は私ども管理職に直接ご指摘いただければ幸いです」といった形で、感情の受け皿を部下ではなく管理職に寄せることはできます。
管理職の役割は、成果を出すことだけではなく、部下が安心して働ける環境を守ることでもあります。取引先との関係維持も大事ですが、社員の心が折れてしまえば長期的には組織そのものが弱くなってしまいます。
また、今回の件を機に、社内でも「対外的なハラスメントへの対応方針」を共有しておくのは有効だと思います。社内ハラスメントだけでなく、社外からの過度な圧力についても、組織としてどう守るかを考える時代です。
最後に。あなたが今こうして悩んでいること自体、部下を大切に思っている証拠です。取引先にも誠実でありたい、部下も守りたい。その両方を考えているからこそ苦しいのだと思います。簡単な答えはありませんが、「関係を壊さず、しかし部下も守る」という姿勢を持ち続けることが、結果的に一番信頼される管理職につながるのではないでしょうか。
◇西村 誠司(にしむら・せいじ)1970年生まれ、愛知県出身。「にしたんクリニック」などを展開するエクスコムグローバル株式会社代表取締役社長。名古屋市立大学を卒業後、外資系コンサルティング会社に入社。2年で退職して25歳で起業、現在年商333億円に成長。TikTokフォロワー数7万9000人。
