生ガキをいくら食べても平気な人がいる→広島出身の人でノロウイルス中毒になった人を見たことがない→医師が謎を追う
実は私は甲殻類アレルギーで、エビの頭やカニの身を食べると、ヘタをすると死んでしまうくらい、激しいアレルギー反応が出てしまいます。その分カキは平気なので、しかも大好物ときており、冬にはほとんど毎日と言っていいくらい、カキ料理を食べています。でも生ガキだけは食べないようにしています。「ノロウイルス」にやられたら、上へ下への大騒ぎ。トイレに一晩中こもりっぱなし、という憂き目にあいます。経験のある方も多いと思います。
ところが生ガキをいくら食べても平気な人がいるのです。同じカキを食べても、すぐにあたる人と、まったく症状が出ない人がいるのは事実で、そこには明確な個人差があるのです。その違いは何でしょう。今回はこの点を医学的に解説したいと思います。広島出身の人でノロウイルス中毒になった人を見たことがありませんので、私の私見では、ノロウイルスに対する抗体を持っている人といない人の違いだと思っていたのですが、それを立証する論文は探しても見当たりませんでした。
となると、まず重要な要因の一つが胃酸です。胃酸は塩酸並みの強い殺菌作用があり、体内に侵入した病原体を殺菌します。しかし加齢・強いストレス・暴飲暴食・胃薬(胃酸分泌を抑える薬)の長期使用などによって胃酸の分泌が少ないと、ウイルスが生きた状態で腸に到達し、食あたりとなります。腸内環境も大きく影響します。便秘や下痢を繰り返している人、食生活が不規則な人、抗生物質を頻繁に使用している人は腸内細菌のバランスが崩れやすく、ウイルスや細菌に対する抵抗力が低下しがちです。さらに、睡眠不足や慢性的な疲労、強いストレス、基礎疾患のある人、高齢者など、免疫力が低下している状態では、ノロウイルスなどの感染症に対する防御力が弱く、発症しやすく、重症化する傾向もあります。
食あたりしにくい人の特徴としては、胃酸がしっかり分泌されている・腸内環境が安定している・十分な睡眠が取れており慢性的な疲労やストレスが少ない・栄養バランスが良い食生活を送っている・大きな持病がなく免疫力が保たれている、などです。ただし、『体質的に絶対にあたらない人』が存在するわけではなく、どれだけ健康な人でも体調次第では誰でも食あたりを起こす可能性があるという点はお忘れなく。
◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。
