ステーキハウス症候群 大きな腫瘍のようなものがあると思ったら肉の塊だった!→医師の治療は「えいやッ」で患者は回復

 私の同期の外科医の経験ですが、まだ大学病院の勤務医時代、定期的に当直に行っていた救急病院で、胸痛を訴える60歳代の患者さんが搬送されてきました。主訴は、食後の急な胸の痛みと胸部苦悶感。これは心疾患だろうと目星をつけて、内科当直で隣の部屋に泊まっておられた循環器の先生に一声かけて、まずは友人が対応しました。

 患者さんは意識も清明で、呼吸も異常はなく、血圧や心拍も安定していましたが、胸部苦悶感から冷や汗をかいていたため、やはり狭心症か急性心筋梗塞を疑い、内科当直の先生を呼ぶ前に済ませておこうと、心電図・胸部X線検査・血液検査をしたのですがどれも異常なし。これでは循環器の先生を呼んでも無駄足を踏ませるだけです。

 さてどうしようかと、試しに胸部CTを撮ったところ、食道の真ん中あたりに大きな腫瘍のような影。もう一度、付き添いのご家族とお話をしたところ、夕食は患者さんが大好きなステーキで、珍しく今夜は早食いだったと。内視鏡(胃カメラ)を入れると、いました、いました。塊状のステーキが。カメラの先でステーキを胃に押し込んだら一瞬で症状が消え、その後は元気に歩いてお帰りになったとのこと。あまり急に押し込むと、食道破裂の危険性もあったのですが、少しくらい力を入れてもステーキの塊はビクともせず、結局思い切り「えいやッ」で治療終了。

 後で調べたら、この症状には「steakhouse syndrome」という正式な病名があり、急いで食事をした後、食道に食べものがひっかかった状態を指します。アメリカでステーキをほとんど噛まずに飲み込んで、食道に詰まらせる症例が散見されたことから、1963年に初めて報告されたそうです。

 でも私も、お正月に同じ病院で当直していた時、お餅を喉に詰めて心肺停止状態で救急搬送されてきたお年寄りがいました。残念ながら蘇生できませんでしたが、お餅が気管に入ってしまって窒息したのです。こうなっては、救急車を呼んでも手遅れです。ステーキ丸呑みでも、食道に入ってくれたら何とかなるものです。

 ◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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