体操・橋本大輝が診断された「菊池病」 発熱と首のリンパ節の腫れをきたす良性のリンパ節炎→確立された治療法ない

 体操の橋本大輝選手が「菊池病」との報道に、多くの方が驚かれたかと思いますが、まずはみなさん、そんなにご心配なさらないでください。聞きなれない病名である理由は、ほとんどの場合、確定診断される前に自然治癒するから、と言って過言ではありません。もちろん、難病・不治の病でもありません。

 菊池病は「亜急性・組織球性壊死性リンパ節炎」とも呼ばれ、発熱と首のリンパ節の腫れをきたす、良性のリンパ節炎です。1972年、九州大学の菊池先生らが世界で初めて発見し報告されました。それまで悪性リンパ腫として治療されていた例の中に、この病気が隠れていたことが分かり、その後「Kikuchi’s disease(菊池病)」と呼ばれるようになったのです。

 発熱、頚部リンパ節腫脹、頚部の痛みが主症状で、東洋人に多く、欧米では比較的まれで若年女性にやや多くみられるとの報告があります。原因不明とされていますが、ウイルス感染がきっかけになるのではないかと言われています。診断を確定するにはリンパ節の生検が必要で、そこまで大掛かりな検査をする前に自然に治ってしまうため、専門医でなければ、ほとんどお目にかかる病名ではありません。

 確立された治療法もなく、通常は無治療でも1カ月~数カ月で自然軽快しますが、ごく稀に再発する場合もあり、治癒後も数年単位で経過観察が必要とされています。橋本選手は日本の宝とも言えるアスリートの一人です。ささいな体調の異変でも、周囲のトレーナーやスポーツドクターが見逃さず、入念な検査の上で判明した「珍しい病名」が付いた、と想像できます。

 ◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。

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