感染性胃腸炎の患者春になっても収まらない!ノロウイルスに感染しないための予防法を医師が伝授、入浴前にお尻洗って
新年度を迎えて、新型コロナやインフルエンザの感染症はほとんど見なくなっていますが、一方で感染性胃腸炎の方が次々と訪れてきます。実際は年明けから増えているのですが。原因として多いのが、かの有名な「ノロウイルス」です。今回はこのウイルスに感染した際の対処法や、感染しないための予防法などを簡単に解説します。
食べ物にノロウイルスがついていれば、まず間違いなく食中毒を起こしますが、食べ物からではなく、感染した人から健康な人へもうつります。唾液や便にウイルスがウヨウヨいるからです。ノロウイルスに似たウイルスに「サポウイルス」というのも増えており、似たような症状を起こしますが、ノロよりは少し軽症の印象があります。ノロウイルス・サポウイルス・ロタウイルスといったものが原因のウイルス性胃腸炎は、多い年には年間100万人を超えると言われています。毎年、冬に患者が増えることが分かっていますが、今年は春になっても収まりそうにありません。
感染性胃腸炎の診断のための検査(PCRで便中のウイルスを調べる)は、普通はしません。理由は二つあります。一つは結果が分かった時にはほとんどの人が治っているから。もう一つは、原因がノロウイルスでもそれ以外でも、治療は水分摂取などの対症療法しかないからです。ノロウイルスに効く薬はありませんが、ほとんどの場合、水分をしっかり摂ってウイルスを排泄すれば、数日でよくなります。
要は「下痢は病気ではない」のです。胃や腸にいるウイルスなどの感染性物質を早く出し切ってしまうための、身体の防御反応なのです。だから私は「下痢止め」は決して処方しません。ところで今年はいまだに感染者が増え続けている理由は『寒さ』です。3月の初めに豪雪を伴う寒波が何度か訪れましたけど、免疫力は温度が下がると落ちます。流行の背景にあるのは季節外れの寒波による免疫力の低下なのです。さらにもう一つ、新しいタイプのノロウイルスが生まれています。みなさんお馴染みの変異種というやつですね。新型コロナで騒いでる間に、ノロウイルスもちゃっかり変異して、感染しやすくなっていたのです。
嘔吐や下痢が特徴のノロウイルス。トイレの利用頻度が増えますが、流し方が大切です。フタをしてから水を流す。これだけ。トイレ室内で浮遊するウイルスはフタをすることで4分の1に減ります。それでもトイレのフタって前の方に隙間がありますね。そのあたりの床を拭いていただくと、なお良しです。ノロウイルスはアルコールやファブリーズでは滅菌できません。塩素系消毒剤しか効果がないので、使用時はマスクと手袋を忘れずにお願いします。感染者は家族で一番最後にお風呂に入ってください。ただし浴槽に入る前によくおしりを洗うこと。ご家族の予防策はこまめに石けんで手洗いする以外にないので、厄介です。
◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、日本臍帯プラセンタ学会会長。