【中塚美智子医師】食事中の誤嚥を防ぐための手軽なトレーニングとは

 ゴホッ、ゲホッ。食事中によくむせる方、いらっしゃいませんか?

 恥ずかしながら私もよくむせますが、そのたびに周りの空気が冷たく感じられます。申し訳ないと思いつつ、せんべいの粉が喉に引っ掛かってゴホッ、改まった席でむせないようにと緊張してゲホッ。慌てて飲み物を飲んだ時や鼻を勢いよくすすった時などもせきこむことがありますね。

 これらは食べた物などが胃に続く食道ではなく、ほぼ同じ場所にある、肺に続く気管に入り込むのを防ぐ反射です。

 食事の時、食べ物を認識してから飲み込むまで、私たちの体の中では多くの神経や筋肉を使う複雑なシステムが働きます。食べた物などを飲み込む時、気管にはふたがされ、食べた物が入らないようにするために呼吸も止まります。

 食道は普段は閉じていますが、飲み込む瞬間に約0・5秒間開きます。この複雑なシステムは残念ながら時々誤作動を起こし、0・5秒の間に食べた物が食道を通過できなかったり、まだ喉に食べた物があるのに気道のふたを開けてしまったりすることがあります。

 食べた物などが誤って気道に入ってしまうと、肺の中で細菌が増殖し、肺炎の原因になりかねません。特にお年寄りや体が弱っている方は、むせることで異物を気管から出すといった機能が衰えていることが多く、注意が必要です。

 歌ったり体操をしたりすることは、異物を気管から出すための機能を高めるのに有効です。日頃から表情豊かに話し、笑っていると、会話も弾み、顔や喉の筋肉も自然に動かせそうですね。唾液を意識的にゴクッと飲むというトレーニングも手軽にできてお勧めです。

 虫歯や歯周病にかかっている方は、口の中の細菌数が多くなっています。せっかくのトレーニングが台無しにならないよう、治療もぜひお忘れなく。

 ◆筆者プロフィール 中塚美智子(なかつか・みちこ)大阪歯科大学医療保健学部准教授。歯科医師、労働衛生コンサルタント。「歯科医療の発展が日本を元気にする」と信じ、日々未来の歯科衛生士、歯科技工士の養成に携わっている。

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