【谷光利昭医師】坂口さんの「医龍」は特別なドラマ

 特発性大腿骨頭壊死症。あまり聞かない病名です。内服のステロイド投与歴のある人や、アルコール多飲の人に見受けられると言われていますが、原因は明らかになっていません。軽症なら内服治療ですが、重症になると手術なども行います。最近、俳優の坂口憲二さんが、この病気のために芸能活動を無期限休止されたと聞き、衝撃を受けました。

 坂口さんは、私にとっても特別な思いのある俳優さんです。あまりテレビは見ないのですが、坂口さん主演の「医龍」は、よく拝見していました。私が若い頃、東京の三井記念病院に行き、そこで外科医となるきっかけを作って下さった大先輩の須磨久善先生がモデルとなり、監修もなされた医療ドラマだったからです。

 須磨先生は天才がさらに努力をしたような方で、憧れでした。冠動脈バイパス手術は早さ、正確さを伴い、多くの患者さんの命に関わってこられました。発想も豊かです。心臓の血管に、お腹の中にある胃の動脈をつなげる手術を開発されたり、日本で初めて「バチスタ手術」をされた天才外科医です。

 このドラマは本当に共感できました。須磨先生だけでなく、手術室や麻酔科医やその他の医療スタッフも、まるで三井記念病院のようだったからです。手術室での緊張感、臨場感も非常によく再現されていて、素晴らしいドラマだなと感心して見ていました。

 坂口さんは、患者の命を救うためなら何事も厭わない医師を好演され、その姿に襟を正された気がしたものです。そんな俳優さんがこのような形で休業されるとは残念です。医療は日進月歩ですが、原因不明の病気もまだ多くあり今後さらなる進歩が期待されています。なんとか病気を治して頂き、再びドラマで拝見できる日が来ることを切に願うばかりです。

 ◆谷光利昭(たにみつ・としあき)兵庫県伊丹市・たにみつ内科院長。外科医時代を経て、06年に同医院開院。診察は内科、外科、胃腸科、肛門科など。デイリースポーツHPで「町医者の独り言」を連載中。

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