【野球】リードに悩み先輩の達川捕手に相談も返ってきた言葉に絶句「バカにされてると思いましたね」元カープ西山さん

 先発、中継ぎ、抑えとして22年にわたって広島を支えた大野豊投手は、西山秀二さん(58)にとって尊敬してやまない存在だ。98年9月の引退登板には、左手の故障からのリハビリ途中だったにもかかわらず自ら志願して女房役を買って出たほどだ。初めてコンビを組んだころにかけられた言葉、試合後のおとこ気あふれる姿…。希有な存在だったレジェンド左腕、そのリードに悩み先輩捕手に助言を求めた思い出を語った。

 ◇       ◇

 初めてコンビを組んだ時から、ベテラン左腕のプロとしての姿勢にほれこんだ。

 「初めて大野さんと組む時にあいさつに行ったんです。そしたら“好きにサインを出したらいいぞ。おまえの言うとおりに投げてやるから”と言われたんです。なかなかそんな人はいないじゃないですか」

 西山さんの口調は熱を帯びた。南海から広島にトレード移籍して5年目、1軍で25試合に出場した90年当時、12歳年上の大野投手はプロ14年目、先発ローテの一角を担いフル回転していた。そんな大御所からの「おまえの言うとおりに投げる」との言葉に、22歳の若手捕手の心は揺さぶられた。

 ただ、結果はついてこなかった。

 「やられたんです。それで僕がコーチに怒られてたら、大野さんがそこに来て、“何をニシに言うことがあるんですか。文句があるなら僕に言ってくれ”と。“僕が納得して投げて、甘く入って打たれたのに、ニシを責めてもしょうがないでしょう”って言ってくれたんです。コーチも黙ってどこかに行きましたね」

 若手捕手を矢面に立たすことなく、投げて打たれたのは自分だと主張し、責任を一身に背負うその姿勢。「そんな人、いないでしょう」。西山さんは同じ言葉を繰り返した。

 当時は達川光男捕手が正捕手を務めていたが、90年4月30日の中日戦で西山さんはスタメン起用され、大野投手とバッテリーを組んだ。結果は6回を5安打8三振5四球3失点。大野投手は一発も許し、126球という球数を投げて6回で降板している。試合は0-8の完敗だった。

 苦い経験をしたことで「なんとか大野さんと組んで勝ちたい」という思いは募った。

 西山さんはわらにもすがる思いで、大野投手と同級生で、自身とはライバル関係でもある達川捕手に教えを請うた。

 「大野さんと組んだ時はどうしたらいいんですか。すみませんけど、教えてもらえませんかと聞いたんです」

 達川捕手はあっさり、こう答えたという。

 「簡単よ、おまえが思うたサインと違うサインを出したらいいんよ。おまえが真っすぐと思ったら、変化球のサインを出せばいいんじゃ。おまえが思うたのと逆を出したら抑えられるよ」

 その言葉に西山さんは反発を覚えた。「自分の考えは通用しないっていうことでしょう。バカにされてると思いましたね。若かったし、なんや、このおっさんって」

 当時の思いを赤裸々に口にした。

 しかし、大野投手と組む回数が増えていくにつれて気づきがあったという。

 「何年かして達川さんと自分の違いが分かったんです。達川さんは大野さんと組んでる時にストライクを取ろうと思ってない。例えば2ボール、1ストライクの場合。僕は3-1にしたくないから、ストライク近辺に来るボールを要求する。でも達川さんは違う」

 西山さんは続けた。

 「達川さんはワンバンでもいいからバッターが振るような球を要求する。大野さんの球はキレがあるから、ストライクを取ろうと思わなくていい。勝手にバッターが振るんです。バッティングカウントなら間違いなく振るというのが達川さんのリード。僕はそこでストライクを取りにいくからやられる。僕の最初のリードはどうやってストライクを取るかしか考えてなかった。達川さんが言ってたことはこういうことだって気づいたんです」

 もっとも、達川さんにあの時の言葉に込めた真意を聞いたわけではない。「聞いたら、ワシは適当に言っただけじゃって言われるかもしれません。真相は分からないですけど、僕はそう解釈しました」。

 独特な達川語に隠された意味を推し量った。

(デイリースポーツ・若林みどり)

 西山秀二(にしやま・しゅうじ)1967年7月7日生まれ。大阪府出身。上宮高から1985年のドラフト4位で南海に入団。87年のシーズン途中で広島にトレード移籍。93年に正捕手となり94、96年にはベストナイン、ゴールデングラブ賞を受賞。広島の捕手として初めて規定打席に到達して打率3割をマーク。2005年に巨人に移籍し、その年に引退。プロ在籍20年で通算1216試合、打率・242、50本塁打、36盗塁。巨人、中日でバッテリーコーチを務めた。

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