【サッカー】柏・久保藤次郎の飛躍の裏側 J3から一歩ずつ上がった苦労人 7月に日本代表初選出、芽生えた新たな野望とは

 大きな飛躍を遂げた柏・久保藤次郎
2枚

 J1柏はリーグ戦6連勝締めも、首位鹿島に勝ち点1届かず。2011年以来2度目のリーグ制覇を逃した。ただ、シーズン通して貫いた攻撃的なパスサッカーは誇れるものだったはずだ。特に今季加入したMF久保藤次郎(26)は、右ウイングバックを主戦場に7得点4アシストの活躍で、開幕からの躍進を支えた1人。世代別の日本代表経験はなく、J3から一歩ずつ階段を上がってきた苦労人は、7月の東アジアE-1選手権で日本代表に初選出。大きな飛躍となった1年の裏側に迫る。

 最終戦、勝利を告げる笛が鳴った後、スタジアムは一瞬の静寂に包まれた。首位の鹿島が勝利したことが伝わると、肩を落とした久保。2021年にJ3藤枝でプロデビューしてから5年目、一歩ずつ階段を上ってきたJ1優勝までのシンデレラストーリー完遂まであと一歩だった。ただ、優勝がかかったホーム最終戦で、負傷から約3カ月ぶりの先発復帰を果たし、勝利に貢献。「最終節でピッチに立ててよかった」と振り返った。

 今季、覚悟を持って柏に移籍した。プロ入り後はJ2昇格、J1デビューまで「結構トントン拍子で自信を失わずに来ていた」と久保。だが、23年途中から昨年までJ1で活躍できず「自分はJ1でやれないのかな」と思う時もあったという。

 「もう若くないので、今年は本当にJ1で戦う最後のチャンスというか、そのくらいの覚悟で柏に来た。ここで結果を残せなかったら、後は落ちていくだけ…みたいな。ただ、こうなるとはさすがに思っていなかった」

 プレシーズンでアピールし開幕戦先発を果たすと、以降は豊富な運動量を武器に右サイドの核として存在感を放つ。3試合で2得点1アシストを記録した6月には、J1の月間MVPを獲得。勢いのままに7月には初の日本代表入りを果たした。

 転換点の一つが、ミドルシュートを決めた4月2日の第8節・京都戦。J1名古屋時代、好調が続かず徐々に出場機会を減らした苦い経験と似た感覚が、京都戦前にあったという。「ここで踏みとどまれたのは本当にターニングポイントだった。“第2波”みたいな感じだった」と壁を打ち破った。

 「一番感謝したいのは(ロドリゲス)監督」と、情熱的な指揮官の存在も大きかった。緩急をつけたドリブルが得意な久保の特長を理解し「仕掛けられる時は仕掛けろ」と調子が悪い時も信頼して起用。ぶれない発言が、のびのびとしたプレーを可能にしたという。

 初の代表活動を経て、新たな野望が芽生えた。リーグ2位で終え、来季出場の可能性があるアジア・チャンピオンズリーグ・エリート(ACLE)での優勝だ。「海外挑戦という意味ではなく、世界と戦いたい。クラブワールドカップに出て欧州のチームとも対戦したい」。久保藤次郎の物語は、まだ終わらない。(デイリースポーツ・松田和城)

 ◇久保藤次郎(くぼ・とうじろう)1999年4月5日、愛知県出身。グランパスみよしFCから帝京大可児高を経て、中京大に進学。2021年にJ3藤枝で特別指定選手としてデビュー。22年に30試合10得点を記録し、J2昇格に貢献した。23年途中からJ1名古屋へ完全移籍。25年に柏に完全移籍するとブレーク。7月には日本代表に初招集され、東アジアE-1選手権の香港戦で代表デビューを果たした。名前の藤次郎は戦国武将・伊達政宗の「仮名」から。東北出身の父親が名付けた。167センチ、64キロ。

関連ニュース

編集者のオススメ記事

インサイド最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング

    話題の写真ランキング

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス