【野球】春先から一変した巨人・田中将の復活は本物? 新たな形を模索する挑戦「違う手応え感じている」
8月7日・ヤクルト戦(東京ド)で約3カ月ぶりの1軍復帰登板を果たした巨人・田中将大投手(36)。復帰後は2戦連続で白星こそ逃したが、低めを丁寧に突く打たせて取る新たなスタイルで、確かな手応えも口にしていた。その復調を見せる投球は、果たして本物なのか…。これまでの軌跡をたどりつつ、田中将の現在地を探った。
春先とは見違えるような投球だった。1軍復帰となった7日・ヤクルト戦。二回は先頭・村上を直球中心で追い込み、最後はスプリットで空振り三振に斬るなど、三回まで完全投球という安定感だった。球速などは春先と変わらない。だが、直球も変化球も低めに、両サイドに丁寧に集める一球一球の精度は、素人目にも違いが分かった。
田中将も「春先からは違う手応えを感じていた。やってきたことの積み重ねが出せた」と自己評価。ただ、13日・中日戦(東京ド)も含めて中盤に四球や味方失策が絡んで失点をし、惜しくも白星には届かなかった。
日米通算200勝まで、あと2勝。ファンや周囲の注目は、この2戦の投球が本物なのかどうか…ということだろう。
2月の春季キャンプから田中将を指導してきた久保康生巡回投手コーチは「春から伝えているように、上からボールを下に降ろしていかないと成果は出ない。それができてきた。それに、分かってきた。自分の体に伝えるためにいろいろなエクササイズをやって、少しずつハマった。それが7月以降かな」と説明した。
2月から課題は同じ。それが半年以上かけて、ようやく形になってきたという。以前には田中将も「感覚としてそれぞれ(体の)使い方、動き方にクセがあって。教えていただいていることをどう自分に落とし込んだらいいかを考えながらやっている」と話していた。
久保コーチらの教えと、自らの理論とのすり合わせ。トライ&エラーを繰り返した結果が、今の姿ということだろう。
「長い時間をかけて僕自身、少しずつ少しずつ崩れていって、それが大崩れになって今がある」と田中将が現状を語ったことがある。彼ほどの経験があっても今の自らにベストな形を見いだすのは時間を要するのだ。
久保コーチも「最初に(核心を)言ったこと自体が、僕の言い方としては間違っているのかもしれない。ちょっと急すぎたかなっていうところも感じている」と述懐する。投手とは繊細な生き物だ。最初に正解を教えたとて、たどり着く道筋は人それぞれ。周囲から遠回りに見える道程も、田中将が復活するためには、必要な手順を踏んできたと言えるのだろう。
それは、気が遠くなるような道程だ。久保コーチも「彼は非常に取り組みに対して納得いくまでやっていこうというのを強く持っているよね」と田中将の精神力を称賛する。その歯車が今、ようやくかみ合い始めた。
田中将の復調は本物なのか-と問われれば「いまだ道半ば」が答えだ。それは全盛期の“欠片(かけら)”を取り戻す突貫工事ではなく、新たな形を模索する挑戦だからに他ならない。復活はまだ先。ただ、その時が近づいているのは間違いなさそうだ。(デイリースポーツ・中田康博)





