【野球】阪神・高寺 好調の裏に“ミエちゃんバット” 太~い“置き土産”使用で「詰まっても飛んでくれる」
阪神の高寺望夢内野手(22)のバットが火を噴き始めている。10日のヤクルト戦(京セラ)でプロ初の猛打賞を記録。3試合連続のマルチ安打で9試合連続出塁と、下位打線のキーポイントになっている。好調の要因の一つは6月中旬にバットを変えたこと。相棒に選んだのは、昨季まで在籍したミエセスの置き土産だった。
虎党も大好きな、あの助っ人が高寺にパワーを授けていた。あれは6月ごろ。転がっていたバットをふと手にすると、グリップ裏には55の数字が刻まれていた。持ち主は昨季まで在籍したミエセスのものだったが、今は海の向こうにいる。試しに打撃練習で使ってみると、妙にしっくりきた。
自身のものよりも太いのが一番の特徴。「持ってみてください」と言われたから握らせてもらうと、グリップから芯までの太さは歴然とした変化だった。太くなることで何が良くなるのか。「詰まっても飛んでくれるんですよ」。今までは芯に当たらないと打球は死んでいた。ミエちゃんバットは極端な言い方だが、根元でも芯の役割をしてくれる。
「だから余裕ができましたね」
この「余裕」が高寺を大きく変えた。試合で使ったのは親子ゲームだった、6月19日のウエスタン・広島戦(SGL)。いきなり4安打の固め打ちとなった。1軍で使う決心を固め、同20日以降の成績は49打数18安打で打率・367。メーカーに発注し、今はグリップ裏に67が刻まれている。
最近の打席を見ていると、追い込まれても粘る場面が多く見られる。これもバットの効果。詰まってもいいという考えがあるから、球を長く見ることができる。7月27日からは出場9試合連続出塁で、その期間中は6四球。8番を打つことも多く、つなぎ役としては重要なことだ。
実際に持たせてもらうと、太すぎて握りにくさも感じた。「そうなんですよ。でも、握りにくいからこそ、軽く振ることもできるんです」。自然と力が抜け、無駄な力みがなくなることもプラス要素。小谷野打撃コーチにも相談したというが、「合っていると思う」と太鼓判を押された。
7月30日の広島戦(甲子園)では中堅へ強烈な飛球を打った。あと一押しに見えたが「アウトなら一緒です」と強気な言葉を聞いた。それから3日後に今季2号。ベンチ前での雄たけびに、1打席への思いが伝わってきた。
元々、打撃センスは佐藤輝らも一目置く存在。ファーム暮らしも長かったが、ついに1軍での働き場所をつかもうとしている。ミエセスの置き土産が意外なところで役に立った。天才的な技術と努力が実を結び、最強の相棒も入手。高寺のサクセスストーリーは、まだ序章に過ぎない。(デイリースポーツ阪神担当・今西大翔)




