【スポーツ】豊昇龍に向けられるシビアな見方 武蔵川親方「スピードで負けていた」 横綱昇進3場所で2場所途中休場
琴勝峰が平幕優勝で初の賜杯をつかんだ名古屋場所。新会場IGアリーナとともに注目を集めたのが新横綱大の里だった。東西横綱の激突が期待されたものの、豊昇龍の休場でお預けとなった。豊昇龍は昇進3場所で2場所途中休場と苦闘が続くだけに、元横綱の親方からはシビアな見方が向けられた。
豊昇龍は1勝4敗10休。2日目から無言のまま姿を消した。若元春に敗れると支度部屋で取材を拒否した。安青錦、阿炎と3日連続で金星を配給し「左第1趾MTP関節捻挫 左第1中足骨骨挫傷」の診断書とともに休場。場所前の出稽古で痛めた左足親指が、3日目の安青錦戦で悪化したという。
12勝3敗と一定の数字を残した夏場所後、モンゴルに里帰り。山登りし「リフレッシュした」と言う一方「高い山で空気が薄い。胸が痛くなるくらいで、それで疲れなくなる意味もある」と語っていた。師匠の立浪親方(元小結旭豊)は「トレーニングでモンゴル相撲を取ってきた」と明かしていた。場所前も状態の良さが伝えられていた。
体重は5キロほど増し、150キロ台半ばとなっていた。立浪親方は「大きくなって自信が出てきたのでは。160キロ近くまでいきたいでしょう」と語っていた。
それだけに、年6場所制が定着した1958年以降で3代目朝潮、稀勢の里以来3人目となる昇進3場所で2回途中休場の事実は重い。前の両横綱のような致命的な負傷で初日から休場というよりも、負けが込む中で負ったケガが休場の要因となった点も悩ましい。八角理事長(元横綱北勝海)は「親指は一番力が入るところ。まずは治すことだ」とエールを送る。
春巡業で幾度も直接指導していた審判部の音羽山親方(元横綱鶴竜)は「体が軽いから、相手を受け止めてというのができない。全部後手後手になって、消極的になる」と指摘する。武蔵川親方(元横綱武蔵丸)は「気になるのはスピードで負けていたこと。体を大きくし過ぎると相撲がおかしくなる場合がある」と心配していた。芝田山親方(元横綱大乃国)は「横綱は番付が落ちないから後がない。勝てないと引退するしかない。それをどう意識するか」と覚悟を問うた。
勝てないとあらゆる点で批判されるのは、横綱の宿命。横綱審議委員会の大島理森委員長(元衆院議長)に「至極残念であります」と所感を述べられるのも仕方ない。立浪親方によると、横綱昇進の件でモンゴル政府からの表彰が予定されているという。秋場所(9月14日初日、両国国技館)に出場するのか。切れ味鋭い攻め、その豪快さの復活を期待したい。(デイリースポーツ・山本鋼平)





