【野球】青鳥特別支援学校ベースボール部“新戦力”は女子部員 1年生・小山紫織さん「野球は自分を正しくしてくれる」

 青鳥特別支援で初の女子部員となった小山さん
 青鳥特別支援で初の女子部員となった小山さん
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 軽度の知的障がいを持つ生徒が通う、東京都の青鳥(せいちょう)特別支援学校のベースボール部に“新戦力”が加わった。初の女子部員となる小山紫織さん(1年)。昨夏に特別支援学校では史上初めて、全国高校野球選手権の地方大会(西東京)に単独出場を果たした同校で奮闘を続ける姿を追った。

 正直驚いた。引き締まったユニホーム姿、投球や捕球の正確性…小山さんが野球に打ち込む姿は、スポーツ未経験者とは思えぬほど様になっている。何より、生き生きとした表情が印象的だ。

 「楽しそうだった。運動がしたい、筋肉をつけたいと思って」

 ベースボール部の奮闘を両親から聞き、父が野球をしていたこともあり興味を持ったという。初の女子生徒だったため懸念もあったが「強い決意を示してくれた」と久保田浩司監督(59)。仮入部を経て、5月に入り本入部が実現した。

 キャッチボールやノック、打撃練習など全て男子部員に交ざり練習に励む。「一番楽しいのはバッティング。投げるコントロールを良くしたいのと、まだグラウンドの半分くらいしか投げられないので、端まで届くように肩を強くしたい」と、コーチに助言をもらいながら成長中だ。久保田監督は「チームで1、2を争うくらい意欲が高い」と目を細める。

 日本高野連が定める現在の規定では女子部員の公式戦出場は認められていない。久保田監督は東京都高野連に小山さんの公式戦出場を願い出る依頼文を送ったが、かなわず。今夏の西東京大会は記録員としてベンチ入りすることになった。

 久保田監督は「練習試合とは違って、選手が一番、力を発揮できる晴れ舞台が大会。成果を出す機会がほしい」と話す。長年、障がいを持つ子どもの指導にあたってきた経験を踏まえ、小山さんが男子部員と同じように努力の成果を披露する舞台を用意したいと考えている。理想論ばかりを語るわけにはいかないが、小山さんの懸命な姿には、教育の一環としての高校野球の“原点”が詰まっていると感じる。

 「実を言うと、小、中学校は半分、不登校だったんです」と小山さん。入学後も学校生活に不安があったが、ベースボール部に入部後は休まず登校を続けている。「野球は自分を正しくしてくれる」と人生においても特別な存在に。その野球で、より一層の喜びや達成感を味わってほしいと願わずにはいられない。

 悲願の1勝を目指すチームも成長を遂げている。9人の新入生の内、3人は野球経験者。ベースボール部への入部を希望し、受験が必要な職能開発科から入学した生徒が大半だ。昨夏の西東京大会と昨秋の都大会1次予選は、ともに0-66で5回コールド負けだったが、今春の都大会1次予選では37失点で敗戦も、記念すべき1得点を挙げるなど前進している。

 6日には上水と夏の初戦を迎える。「気合を入れて、大きな声で応援したい」と小山さん。小さくとも、大きな意味を持つ一歩を、確かに刻み続ける。(デイリースポーツ・間宮涼)

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