【野球】「軟式甲子園」が初めて開催されたワケ 東日本選抜と西日本選抜が対戦
日本高野連は「全国高校軟式野球選手権大会70回記念 春の軟式交流試合in甲子園」を5日に開催した。史上初めて軟式野球の球児が聖地の舞台に立って躍動。野球人口減少に歯止めをかけるべく、振興に力を入れる日本高野連の取り組みに迫った。
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5月の甲子園に球児の声が響き渡った。銀傘の下で鳴り響いた吹奏楽の演奏。全国から集結した軟式球児は、はつらつと聖地を駆け回った。
5日に開催された「全国高校軟式野球選手権大会70回記念 春の軟式交流試合in甲子園」では、高校軟式野球チームのある39都道府県全てから選手が選ばれ、東日本選抜と西日本選抜が対戦。試合は西日本選抜が3-0で勝利した。高校野球史上初となった軟式選手の甲子園でのプレー。球場には3100人の観客が訪れた。
日本高野連の宝馨会長(68)は「ボールは違うんですけど、同じ高校生がこの場に立って。選抜チームですので、選手のクオリティーも、いいプレーが多かった。高校生の力、高校野球の力を見せてもらった」と感嘆。歴史的な一戦は野球人口減少が危惧されている中、間口を広げるために日本高野連が主催を担って実現に至った。
1956年に高校軟式野球の選手権大会が開催され、今年で70回目。兵庫県の明石トーカロ球場、姫路ウインク球場を併用して夏の選手権大会は行われている。甲子園とは縁がなかった軟式球界に一石を投じた日本高野連。宝会長は「軟式だったら甲子園は関係ないと思ってらっしゃったと思いますけど、こういう機会がありうるんだということ。やってほしいということであれば、そういう方向で努力していきたい」と継続的な開催も視野に入れた。
少年野球、草野球で主に使用され、競技のスタート段階で触れる機会が多い軟式球。硬式球よりもけがのリスクは低く、多くの層になじみがあることからも、軟式球界へのアプローチは野球人口増加に効果的であると考えられる。例年、審判講習会が行われている場を活用して軟式球児の憧れとなる舞台を用意。2年前に発案され、開催までのスピード感からも、日本高野連が野球普及に懸ける思いがにじみ出ている。
2021年からは全国高校女子野球選手権の決勝が甲子園で開催されるようになるなど、硬式の部だけでなく、野球界全体を見渡して改革を施してきた。「甲子園という光は強いですよ。強くて大きい」と宝会長。野球人口の裾野を広げるべく日本高野連の奮闘は続く。(デイリースポーツ・北村 孝紀)