【野球】阪神・藤川監督は勝ちながら育てる 工藤の失敗後に成功体験へ導く 10日ベンチ入りコーチ変更に神髄見た
開幕からセ5球団との対戦が一巡し、ここまで7勝6敗1分けでリーグ2位につける。攻守で藤川球児監督(44)の色が見え始めた中、采配、選手起用で積極的に動く印象が強く残る。10日・ヤクルト戦(甲子園)からはベンチ入りコーチを変更。背景に「ブルペンはチーム」と表する指揮官の思いがあったと聞く。「シーズン3連投解禁」、「イニング途中の投手交代」など、長く守護神として活躍した新監督独自のマネジメントに迫る。
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新監督は変化を恐れない。開幕から14試合目。15日のヤクルト戦で中軸の打順を変更した。昨秋の就任後から3番・佐藤輝、4番・森下の方針を掲げた中、シーズン早々で変更。「ブレない采配…」と書けば聞こえはいい。動いて結果が出なければ采配に批判が集まる。それでも動く、動く。選手起用だけじゃない。
実は、雨天中止になった10日のヤクルト戦から、公式戦では8人に制限されるベンチ入りコーチを変更した。和田豊1・2軍打撃巡回コーディネーター(62)に代えて、金村暁投手コーチ(48)をメンバー登録。ブルペンに配置した。
背景にあったのは9日の同戦。育成ドラフト1位の工藤泰成(23)=四国ILp徳島=が公式戦で初めて甲子園のマウンドに立った。3点リードの六回無死二、三塁。ビーズリーの救援として登場したが、2暴投を含む2四球と制球が定まらず初黒星を喫した。試合後、藤川監督は「選手は失敗を重ねながら強くなる」と責めなかった。
「工藤に関しては成功体験も必要になる。作っていくという意味では行かなければいけないところだと思います。経験をしながら強くなっていくのが選手ですからね」
そう話しながら責任を自らに求めた。「もっとできることはなかったか」「もっとしてやれることはなかったか」-。翌日、金村コーチの登録を決めた。チームの作戦に多くは語らないが、金村コーチも「コーチとして近くで目を見て、話をしてあげることができる」と話す。選手を最高の状態でグラウンドに送り出すために最善を探す。12日の中日戦(甲子園)。九回に登板した右腕は2四球を出しながら無失点で役目を果たした。
失敗後に成功体験を導き勝ちながら育てる。3月28日。開幕の日を迎え、広島市内のチーム宿舎で出陣式が執り行われた。秦雅夫球団オーナー(電鉄本社会長)に続いて、マイクを握った指揮官が静かに語り始めた。「これからは勝ちにこだわっていく。みんなは個人の成績にこだわって伸び伸びとやってくれたらいい。ただ、オレは勝ちにこだわっていく」。キャンプ、オープン戦で見せた対話重視のスタイルを一変させ、ナインを驚かせて一気に士気を高めた。
選手起用にも色が見える。開幕から14試合でイニング途中の投手交代は12回。3月29日の広島戦(マツダ)では「4番が打った試合を落とすわけにはいかない」と、石井大智投手(27)をイニングまたぎで起用。カード3連勝を狙った4月6日の巨人戦(東京ドーム)では3連投を強いた。いずれもシーズン序盤の采配としては異例。長くリリーフとして活躍した経験と、勝利に徹する指揮官の覚悟が見えた。(デイリースポーツ・田中政行)


