【野球】広島・ドラ3岡本の無失点投球を支える“封印しかけた魔球”とは? 「自分でもビックリ」 新井監督絶賛「見極めづらい」
広島のドラフト3位・岡本駿投手(22)=甲南大=が首脳陣の評価を高めている。春季キャンプから対外試合3試合で計3回無失点。アマ時代にほとんど投げず、“封印しかけた魔球”が武器となっている。
初のキャンプを1軍で完走した岡本は、順調に開幕1軍へ突き進んでいる。圧巻だったのは、対外試合初登板となった2月19日の練習試合・ロッテ戦だ。五回に登板して3者連続三振。寺地、友杉はツーシームで空振り三振を奪い「打者も空振りが多かった。ツーシームに少し自信を持てた」と納得顔で振り返った。
同23日のオープン戦・巨人戦は八回を1回1安打無失点。先頭・浅野はツーシームで空を切らせ、1死一塁からは同じ球で秋広を一ゴロ併殺に料理した。
プロの打者相手に威力を発揮するツーシーム。大学時代は「本当にちょっとしか投げてなかったですね」と言うが、キャンプのブルペンで投げると周囲は予想外の反応を見せた。「コーチや捕手に『いいね!』と言われて自信が少し付きました」。一般的にツーシームは直球と同じ球速帯で、打者の手元で微妙に変化する。だが、岡本はフォークのように人さし指と中指でボールを挟んで投げる。
この握りは通常のツーシームより落差が大きく、オリックス・九里やソフトバンク・東浜ら亜大出身者が操る“亜大ツーシーム”に類似。岡本は「握りは(大学時代と)変わらないんですけど、落ちるようになったんです」と明かした。
変化量が増した要因は二つある。大学時代は先発メインだったが、今春は全て中継ぎで登板。全力で1イニングを封じる役割になり、従来より全力で腕が振れるようになったことが大きい。加えて「大学の時より少し角度がついたかなと思います。上からしっかりボールをたたけている」と要因を分析した。
新井監督は「低めに来たら落ちるし、普通の高さに来たら少し横気味に曲がっていく。打者はスプリットだと思ってるんじゃないかな。より打者の手元で変化するので、見極めづらいと思う」と絶賛。一時は封印しかけ、信頼度が低かったツーシームが絶大な効果を発揮している現状に右腕は「自分でも本当にビックリしています」と話す。
対外試合はまだ四死球なし。そこには岡本なりの工夫がある。「(プロと対戦していると)考えたら、力んでしまう。大学生のバッターが立っていると思いながら投げています」。キャンプ中に生じた“うれしい誤算”を武器に変え、投手陣に厚みをもたらしていく。(デイリースポーツ・向亮祐)