【野球】プライドを捨て復活にかける巨人・田中将大 通算197勝右腕を教える久保巡回コーチ 覚悟を決めた二人三脚
復活したいという切なる願いと、復活させたいという強い気持ち。両者が織り成す二人三脚は相当な熱量を漂わせ、今春キャンプで最大級の注目を集めている。日米通算197勝の巨人・田中将大と、久保康生巡回投手コーチだ。
身ぶり手ぶりを交えた指導に、200球を超えるネットスロー。キャッチボール中から、体のバランス、体重移動などについてアドバイスを送った。時にスマートフォンで投球フォームを撮影し、1球ごとに確認するシーンもあった。
3日の初ブルペンでは立ち投げで8球投げた後、捕手が片膝立ちになって28球。最後は強度を上げて腕を振った。田中将は「(キャンプ前と)全然感覚が違います。めちゃくちゃ良いです。練習していたことと同じ感じで投げられた。すごい収穫」と充実感あふれる表情を見せた。
楽天時代の2013年には、前人未到の開幕24連勝という金字塔を打ち立て、球団初のリーグ優勝と日本一を導いた。右肘クリーニング手術明けの昨年こそ未勝利に終わったが、日米通算197勝を誇る右腕。自らの意思で自由契約を選び、巨人に入団することになったが、自らが進んできた道や取り組み方に確固たる信念やプライドがあったはずだと推察する。
4日間に及んだ第1クール。田中将と久保コーチは濃密な時間を過ごした。初ブルペン後には、田中将が青写真に描く2月下旬の実戦に登板について久保コーチは「今日の感じでしたら十分、GOサインを出せそう」と合格点を与えた。第1クールについては「これだけ投げてきたのに、肩とか肘とか疲れていないんで、そういう意味では合ってる。というところから、たくさんやっても壊れないような体の使い方とか、パワーの出し方とかっていうのが、自分の中でのヒントにつなげられていると思います」と語り、続けて「今まで少し投げるとあっちが痛いとか、肩にゆがみがくるとか、肘が痛いとか、それで連続してこういうような練習ができなかったと言っているので、そういう意味でも確信は自分の中でも芽生えてきたんじゃないかなと思います」と、ここまでの歩みに納得の表情を浮かべる。
23年にプロ入りワーストの4勝に終わっていた菅野を昨年、15勝を挙げる復活に導いた久保コーチ。近鉄、阪神、ソフトバンクなどでの指導歴が示すように、多種多様なアプローチ法を持っているが、それでも田中将大というネームバリューを持つ選手を復活に導けるかどうかには、相当な覚悟が必要であったと思われる。
古巣の楽天に別れを告げてまで、復活したいという田中将に対し、阿部監督が久保コーチと手を取り合って再スタートしてみようと背中を押したと聞く。指揮官のサポート、後押しがあったからこそ、田中将は久保コーチの言葉に耳を傾け、久保コーチも遠慮なくメスを入れることができているようだ。
結果はどう出るか、現時点では分からない。だが、両者が同じ方向、同じ目的地を見据えていることが、何よりも重要なポイントではないだろうか。田中将の経験値、実績に申し分はない。36歳と年は重ねた。だが、戦う環境が変わったことで、また新たな一面が引き出されたベテラン選手はこれまでにもいただけに、二人三脚の行く末を見届けたい。(デイリースポーツ・鈴木健一)