【野球】阪神・岡田監督が語っていた勝負師の格言「絶対に動かなアカン」新井監督との采配勝負 首位攻防戦の分岐点に

メンバー表交換時に新井監督からあいさつを受ける岡田監督=21日
 国歌独唱を前に、ベンチ前に並ぶ岡田監督とトラッキー=21日
 かぶとを背に写真に納まる赤ちゃんの時の岡田氏
3枚

 「広島1-2阪神」(23日、マツダスタジアム)

 興味深い手の打ち合いだった。阪神・岡田監督と広島・新井監督が繰り広げた「ベンチの野球」-。両指揮官の動きにフォーカスしていくと、勝負を分けた分岐点は3つあったように思う。

 六回裏の攻撃終了後、新井監督は阪神ベンチの動きをじっと見つめていた。6回無失点と好投した西勇輝を代えるのか、代打に誰を出してくるのか-。ベンチから左の前川が出てきてコールされると、新井監督はマウンドで投球練習を行っていた中崎の交代を告げ、左腕・塹江を投入した。

 すると今度は阪神ベンチが動く。岡田監督は代打の代打・ミエセスを告げた。一気にカードを2枚切った理由を「そんなん1-0で逃げ切るなんか無理よ。(七回は)打順が上位に来るからな」と勝負所と踏んでいたことを明かした。

 結果、ミエセスは膝をつく空振りを見せるも、粘って四球を選んだ。「先頭な、ミエセスがフォアボールを選んだからな。あれはやっぱり大きかったよ」と岡田監督。采配と選手の起用がハマった。そこに1死後、坂倉のミスが絡んだ。二、三塁から森下が犠飛を打ち上げ、貴重な2点目を奪った。

 さらに八回、指揮官は七回に好投した石井をイニングまたぎで送り出した。ここにも綿密なシミュレーションがあった。広島の打順は9番から。すでに広島ベンチは宇草、林とカードを切っており、松山を切り札とするのであれば、右の二俣が代打の一番手とにらんだ。

 その上で代打の代打まで想定。「あそこで普通は左来るけどな。自分らがやったから嫌やったんやろうな」と、さらに広島ベンチがカードを切ってくれば、その時点で桐敷を投入する予定だった。「もう石井には右やったら1人いくって言うてあったからな。こっちのもうなあ、予定通りやったよ」。結果、石井は二俣を見逃し三振に仕留めた。采配の分岐点を鮮やかな押し引きでモノにしたのは岡田監督だった。

 「相手が手を打ってきたら絶対に動かなアカン。打ち負けたら流れを持ってかれるんよ」-。デイリースポーツ評論家時代、こう分析したゲームがあった。2021年6月20日、甲子園で行われた阪神-巨人戦だ。阪神が1点を追う七回裏2死二、三塁の場面。左腕の高梨に対し、ベンチは中野に代打・北條を告げた。そしてカウント2-2と追い込むと、巨人・原監督が投手交代を告げ、右の鍵谷を送り込んできた。

 バックネット裏で見つめていた岡田監督は「張り合うなら代打・糸井よ」-。だが阪神ベンチは動かず、鍵谷は1球で代打・北條を空振り三振に仕留めた。「原監督のガムシャラな采配に引きずり込まれた」と分岐点を評論し、「張り合うなら徹底的にやり合わんとな。向こうはもう投手を代えることができないんやから」と語っていたのを思い出す。

 そして「これは分からんよ」-。試合前時点で、阪神は2位・巨人に7ゲーム差をつけ、首位を独走していた。だが失速し、最終的にはヤクルトに優勝をさらわれる形になった。首位チームの野球をするのであれば「どっしりと構えればええんよ」と左腕・高梨が来てもレギュラー格の中野に代打は出さない。仮に代打を出すなら徹底的にやり合う。ベンチの野球から阪神が失速してしまう可能性までをも指摘していた。

 23日のゲームを見て、その言葉を思い出した。新井監督と手の打ち合いとなる中、先を読み、形勢を優位に保っていたのは岡田監督だった。1点リードの九回裏1死一、三塁の場面でも代打・松山が出てきた際、「同点はしゃあない」と内野を下げ、ゲッツー態勢を敷いた。結果、中野の好守備、木浪との好連係もあって4-6-3の併殺でゲームセットとなった。

 仮に同点でも首位・阪神からすれば1勝1敗1分けで敵地の3連戦を終えれば合格点のチーム状況だ。仮に1点を是が非でも守りにいって前進守備を敷いていれば、打球は一、二塁間を抜けて同点、さらにサヨナラの走者を得点圏に背負う状況になっていたかもしれない。

 序盤のチャンスを生かしていれば、もっと楽に勝てたかもしれないゲーム。だが見方を変えれば、采配一つでここまでゲーム内容が変わることを感じさせられた試合だった。新井監督も1点を追う中盤に2死から代打を出した状況で一塁走者を動かすなど、ガムシャラに勝ちに行く姿勢を見せていた。

 投手が9番に入るセ・リーグだからこそ際立った岡田監督、そして新井監督の采配。ここにもプロ野球の面白さが詰まっていたように感じる。(デイリースポーツ・重松健三)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

インサイド最新ニュース

もっとみる

    ランキング

    主要ニュース

    リアルタイムランキング

    写真

    話題の写真ランキング

    注目トピックス