【ファイト】KO率74%、27連勝無敗の中谷潤人の強さ 相手が「パンチ力は普通」自身も「特徴がない」というその理由とは?

 ボクシングのWBC世界バンタム級タイトルマッチが24日、両国国技館で行われ、同級1位の中谷潤人(M・T)が、王者アレハンドロ・サンティアゴ(メキシコ)に6回1分12秒TKO勝ち。デビューから27連勝(20KO)無敗で、世界3階級制覇を達成した。

 バンタム級に転向した初戦で難敵を下した。身長で13センチ、リーチで10センチ下回る相手に、6回に左ストレート一撃でダウンを奪うと、直後のラッシュで再びダウンを奪取。レフェリーが試合を止めた。

 豪快なKO勝利にもかかわらず、中谷は試合後、自身のボクシングを「あまり特徴がない。インパクトはあまりないかもしれない」と自己分析した。KO率74%と高い数字を誇るが、中谷の強打はいわゆるパンチ力、腕っ節の強さだけを表すものではない。好戦的なスタイルを表すファイターという言葉も当てはまらない。インファイターに見えることもあれば、アウトボクサーの側面もある。一つの言葉にはめ込むことが難しいボクサーだ。

 この日の試合を振り返る中で、中谷は2つのポイントを挙げた。「距離をとってコントロールできた」というのは、身長差の中でも自分の距離を保てた証しだろう。

 また「6回にルディ(エルナンデス・トレーナー)からテンポ上げてアップライトに構えてワンツーワンツーと(間を取って)打つことを言われた」とリズムを変えた。序盤は「(身長の)低い相手でガンガンくる選手なので、上体が立ってしまうと硬くなって(攻撃が)効いてしまう」と意識的に低く構えていた。そこから6回に上体を上げ、遊びの部分を増やしたことでよりリラックスでき、8回の猛攻につながった。

 昨年7月に元5階級制覇王者のノニト・ドネア(フィリピン)を下して王座についたサンティアゴは、試合後「パンチの強さは普通だった。コネクト(タイミングやコンビネーション)が絶妙だった」と話した。試合中に揺れ動く距離感の中で、最も強いパンチを打てるタイミングと場所を察知する。つまり、距離を支配する。前王者の言葉は、それが中谷の最大の武器だと表している。

 辰吉丈一郎、長谷川穂積、山中慎介、井上尚弥ら名王者が居並ぶWBCバンタム級の緑のベルトを手にした26歳は、歴代王者に敬意を表した上で「人それぞれ違うボクシングがあって、違う色がある。見ていて楽しいと思ってもらえるボクシングをするのがプロボクサーだと思う」と矜持を口にした。「特徴がない」と自認しながらも「遠い距離でも近い距離でも、対応していけるのが僕の持ち味。どうKOするか見てもらえたら」とアピール。「僕が倒すシーンを期待して待ってくれている人が増えたらいいな」と童顔をほころばせた。

 米国で最も権威のある専門誌「ザ・リング」などの2023年年間最高KO賞に選出された新王者は、この日、珍しく勝利の喜びを表現した。しかし「ルディからラスベガスの試合で、相手もいると言われていたことを思い返した」とすぐに自重したという。距離だけでなく、トレーナーの言葉も柔軟に受け入れる「ネクストモンスター」。その武器はこれからさらに花開いていく。(デイリースポーツ・船曳陽子)

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