【野球】楽天の30歳新任コーチが追う3恩師の背中 栗山氏、白井氏、三木氏-戦力外通告で一度は球界去る決意

 取材現場の裏側を描く新企画「スポットライトの裏側」。今回は昨年現役を引退し、今季から楽天2軍打撃コーチを務める横尾俊建氏(30)のコーチ就任までの足跡、現役時代に影響を受けた3人の恩師を追って指導者の道を歩み始めた過程に迫った。

  ◇  ◇

 昨年10月のレギュラーシーズン終了翌日、球団事務所に呼ばれた横尾氏は戦力外通告を受けた。他の選手が現役続行への強い意欲や、悔し涙を流す中で「8年間、プロ野球という世界で頑張った自分を褒めたい」と話した表情はすがすがしかった。

 その時のことを「1軍の出場がなくて、覚悟はできていた。すんなり受け入れられた」と振り返る。他球団からのオファーもある可能性を踏まえた上で、発言は控えていたが「まだ社会に出たら若いですし、可能性もいっぱいある。球団に区切りをつけてもらったので、何か新しいことをしようと考えた」と野球界から身を引くことを視野に入れていた。

 そんな時に舞い込んだコーチ就任要請。「プロ野球でやってきたことを認めてもらったじゃないけど、評価してもらった。真面目に取り組んできてよかった思いましたね」と素直に喜んだ。「自分で決めたいタイプなので」と多くの人には相談せず、すぐに引き受けることを決めた。

 そうして30歳の若いコーチが誕生した。「選手がやりやすい環境をつくってあげたい」と理想像を語る中で、プロの世界で出会った3人の恩師の存在を明かした。

 最初に出会ったのは日本ハムに入団した16年当時の栗山英樹監督と白井一幸コーチだ。「栗山監督はいつも体調を心配してくれたり、自信を持たせてくれる言葉をかけてくれた」と回顧。「白井さんは守備がうまくなかった僕に、一つ一つの動作を教えてくれた。プロ野球選手としての振る舞い方を教わった」と感謝を口にした。

 昨年3月には、WBCで侍ジャパンの監督とコーチとして世界一に輝いた2人。ただ、横尾氏にとっては「WBCとか関係なくて、僕にとっては1年目の監督とコーチなんです」と語る。

 そして3人目が楽天の三木肇2軍監督だ。「つらい時も見てもらった。厳しいところもありますし、選手一人一人の性格まで見てる。そういう指導者になりたい」。21年にトレード移籍後、なかなか1軍に上がれない中で寄り添ってもらえたことが印象深い。

 指導者に恵まれ、充実のプロ野球生活を全うした横尾氏。「難しいけど、僕は僕なりにやれることをまねして、いい環境を作れるようになりたい」。プロの世界で出会った恩師の背中を追いかけ、若きコーチが第二の野球人生のスタートさせた。(デイリースポーツ楽天担当・滋野航太)

 ◆横尾俊建(よこお・としたけ)1993年5月27日生まれ。東京都出身。日大三高時代の11年には元阪神・高山らと夏の甲子園優勝を経験。慶大に進学し1年春からリーグ戦に出場。4年時には大学日本代表入りした。15年度ドラフト6位で日本ハムに入団。21年にトレードで楽天に移籍。通算成績は286試合、打率・211、21本塁打、71打点。

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