【野球】「まだ褒めない」大谷翔平の二刀流を支えた栗山英樹氏の指導理論 「信じる」と「疑う」が生んだ革新

 日本ハム、野球日本代表「侍ジャパン」の前監督・栗山英樹氏(62)が、教え子でもある大谷翔平投手について語った。いまや代名詞となった「二刀流」の“生みの親”でもある恩師。超大型契約で名門ドジャース入りに「日本の野球にとって、非常に大切な因縁のあるチーム。物語を感じていますね」と感慨深げに話し始めた。

 会って、声をかけるとしたら-そんな問いに栗山氏は遠くを見た。

 「僕としては良かったなというね。いろんな経緯があったので、入団のころから。みんなの思いを形にしてくれて、みんなを安心させてね。さぁ、これからは本当に自分の好きな野球を、自分なりに自分らしくやってくれる環境を自分で作ったんです。彼のためにプラスになると信じた方向性を、こっちは伝え続けただけ。本当に良かったな、翔平と思います。ここまでよく頑張ったなと思います」

 いろんなことがあった。この一言に、10年分の思いを詰めたのだろう。周知の話でもあるが、高校卒業後のメジャー挑戦を表明していた大谷を、日本ハムがドラフトで強行指名。当時、監督を務めていた栗山氏も同席し、複数回の交渉で翻意させた。入団後は「投手に専念させろ」「野手の方がいい」など、外野の声に耳を傾けることなく、二刀流での起用を続けた。今年3月のWBCでは、米国との決勝戦で最終回に登板。漫画でも描くことのできないラストは、伝説として後世に語り継がれるシーンだ。

 栗山監督の指導理念は「常識を疑うこと」と「選手を信じること」だろう。9月に右肘の出術を受けた大谷は、来季は打者に専念することになる。栗山氏は「僕は、どちらかをやめるという選択肢は、いまも考えていないですね」と断言。「彼の本質は二刀流。それが彼を生かしているし、彼のモチベーションを上げている。難しいことをやり続けることが、彼の進化を止めないことだと僕は思っているので、それを信じています」と続けた。

 一般的には、1つに絞ることで体の負担は軽減する。だが、そんな常識を当てはめれば、大谷翔平は生まれなかった。同時に、新天地ではそんな栗山氏の想像を、超える活躍をすると信じている。

 「例えば、外野を守っていて、そこから2人ぐらい投げて、また戻ってってとか。最後、大事な試合になると、先発投手なんだけど、外野から出てきて最後を締めてるとか…。何でも起こせる可能性がある選手。これから彼がどういう選択をしていくか、ちょっと楽しみかな思いますね」

 愛弟子の未来を語る表情には、野球少年のような燦めきがあった。イノベーションを駆動するには、常識への疑問が必要になる。そんなまだ見ぬ光景に、ファンは驚き、魅了されていく。10年総額7億ドル(約1015億円)の超大型契約。栗山氏は喜びと労いの言葉を口にしたが、「まだ褒めることはしないです」と明かした。

 「こんな数字で良かったなと思わないでくれと。もっと打てるはずだし、もっと勝てるはず。僕は、もっと、もっとって思っていましたけど、もっと日本中、世界中をビックリさせてくれると信じている。本当に褒めるのは、彼が引退する時かなと思っていますね」

 栗山氏の座右の銘は「夢は正夢」。10年前、世界一の選手にすると誓った夢は、いま現実になった。ただ、最低でもあと10年、愛弟子の活躍を楽しむ時間ができた。「来年はちょっと、フラフラするので。どっかのタイミングでフラッと遊びに行こうかなぁなんて、そんなふうに思っています」。夢にはまだ、続きがある。(デイリースポーツ・田中政行)

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