【野球】なぜ阪神・大山はサヨナラのホームに迷いなく生還できたのか 他球団スコアラーが指摘する阪神快走の理由

 二塁走者の阪神・大山は低い姿勢で駆け出し、一瞬の迷いも見せずに三塁を回った。20日の阪神-広島戦。0-0で迎えた九回2死一、二塁から、ドラフト1位・森下の低く、鋭い打球が三遊間を破った。大山はスピードを一切落とすことなく本塁を目指した。左翼・西川のノーバウンド送球はピッチャーマウンド方向にそれ、岡田阪神がサヨナラ勝ちを収めた。

 左翼・西川はほぼ定位置のシフトを敷いていた。1点取られれば負けの場面。一般的には二塁走者を三塁でストップさせるため、前進守備を選択することが多い。それでも新井監督は「ギリギリのところでアウトにしようということだった。それはこっちの指示なので」と、前進守備を敷かなかった理由を説明した。

 広島・森下-阪神・森下のここまでの対戦結果は左飛、二飛、三ゴロの3打数無安打。それでも1打席目にカーブに体勢を崩されながらも、フルスイングで左飛となった打席は、紙一重でオーバーフェンスもあり得るという空気感を漂わせた。新井監督が深く語ることはなかったが、その残像が広島ベンチのシフトに作用したのかもしれない。

 翻って阪神サイドに立てば、広島がほぼ定位置のシフトを選択したことで、打球が内野を破った瞬間、本塁突入は絶対条件として共有されていたのだろう。

 岡田監督は2死から大山が右中間を破る二塁打を放った際、代走を送り込まなかった。8回まで4安打無得点。広島・森下は尻上がりに調子を上げていた。延長戦を見越し、足のスペシャリストを送り込まなかったのか。はたまた、二塁走者を大山のままにしておけば、広島ベンチが前進守備を選択しない可能性があると踏んだのか。岡田監督が試合後に触れることはなかったが、大山は「後は全力で走るだけだったので」と振り返った。

 ツーバウンドで打球を処理した西川だが、跳ね上がる打球にタイミングを合わせたため、チャージの勢いが少しだけ甘くなっていた。2死とあって、大山が捕球体勢を見ることは当然なかったが、藤本三塁ベースコーチは、グルグルと腕を回していた。

 岡田監督のしたたかな狙いがハマったのかどうかは定かではないが、セ・リーグ某球団のスコアラーは阪神コーチ陣の眼力を挙げる。「(外野守備走塁担当の)筒井コーチをはじめとして、阪神のコーチ陣は相手の練習をよく見ています。自分のとこのスコアラーからデータや情報は上がってきていると思いますが、それでもその日の生の情報を自分の目で仕入れてます。西川の肩は決して悪い方ではないと思うのですが、吹かす(送球が上に抜ける)ことがあるんですよ。その可能性があると踏んでの本塁突入だったのかもしれませんね」と語った。

 前日19日は5点差を追いつきながらも結果として敗戦。岡田監督はドラフト1位の森下がサヨナラ打を放ち、貯金を今季最多タイの10に戻したこの日の勝利を「価値のある1勝だと思うし。今日の勝ちによって、(21日に先発する)才木もちょっと楽に投げられるんじゃないかな」と喜んだ。

 前述のスコアラーは首位を快走する阪神について「今年はエラーが出ても、それが失点に結びついたというケースが少ないですよね。尾を引くようなミスになってないと言いますか。チーム全体でカバーできているような。それが強さのひとつの理由だと僕は見ているんですけど。あと、今年は基本のプレーが普通にできてる。例えば併殺プレーであったり、中継プレーであったり、送りバントだったり。普通のことを普通にやれる。これも強いチームに共通するものだと思いますね」と分析した。

 堅実なプレーはもちろん、スコアブックの数字、記号だけでは感じ取ることのできないファインプレーの集積が24個の勝利となっている。(デイリースポーツ取材班)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

インサイド最新ニュース

もっとみる

    ランキング

    主要ニュース

    リアルタイムランキング

    写真

    話題の写真ランキング

    注目トピックス