【野球】ヤクルト・石川の好投の背景にある捕手・中村の重要性 パワー投手全盛時に思う

 43歳球界最年長のヤクルト・石川雅規の好投に浮かび上がる捕手・中村悠平(32)の存在感。パワー投手全盛時に、再認識されるべきは捕手の円熟したインサイドワークではないか。

 ヤクルトの“小さな大投手”、石川が10日の阪神戦(甲子園)で六回途中まで4安打無失点の投球で、今季初勝利を挙げた。この勝利で、米田哲也氏(85)に並ぶ新人から22年連続勝利というプロ野球記録に並んだ。通算勝ち星は現役最多の184となり、目標と掲げる200勝まで一歩前進したことになる。

 私が野球記者になったころはスピードガンが導入されたばかりだった。日本人で故津田恒実氏(広島)や小松辰雄氏(中日・64)のように150キロを超すスピードボールを投げれば騒がれた時代だった。球場のスピード表示が150キロを超そうものなら、それだけでスポーツ新聞は1面で、スポーツニュースはトップで扱った。

 だが、最近ではプロ野球12球団を見回しても150キロを投げる投手ばかりだ。しかも、ボールの回転数が多いフォーシーム、いわゆるストレートが持ち味のパワーボールで打者に対峙(たいじ)するパワーピッチャーが幅をきかせている。エンゼルスの大谷翔平(28)は160キロを超すフォーシームを投げ、握りを変えて微妙に変化させるツーシームでさえ150キロ台を計測する。日本球界でもロッテ佐々木朗希(21)は日本タイ記録の165キロを計測し、フォークボールなども150キロに迫る勢いだ。

 そんな時代に石川が阪神戦で投げたボールは最速134キロ。球速だけなら、甲子園大会に出てくる高校生にも及ばない。丁寧にストライクゾーンの四隅に投げ分ける、ベテランの円熟した投球術の賜物だろうが、打者を打ち取るのは投手ひとりの力ではない。中村のインサイドワークによる部分は大きい。

 インサイドワークは、簡単にいえば捕手が行う頭脳プレーのことだ。蓄積したバッター一人一人の癖、得意なコースや球種、苦手なコース、球種を分析。試合で投げる投手の調子のいい球を見極めて1球ごとにサインを出して、アウトを積み重ねていく。まさに、グラウンド内の司令塔だ。ヤクルト担当時代、球史に残る名捕手のひとり・古田敦也氏(57)を取材していた。だが、当時監督だった故野村克也氏は「アイツはまだまだや」と、なかなか合格点を与えず、味方がピンチの場面では自らがベンチからサインを出すこともあったほど、捕手という仕事は奥深いものだ。

 今、ヤクルトの正捕手・中村は故野村氏、古田氏の系譜を引き継いでいる。ライアン小川泰弘(32)ら先発陣の勝ち星も伸びず、10日終了時点でチーム防御率3・51、失点120はともにリーグ5位だ。それでも15勝16敗、借金1で4位に踏みとどまっている。石川好投の裏に、女房役・中村の存在があることを忘れてはいけないと思う。(デイリースポーツ・今野良彦)

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