【野球】巨人育成の星・戸田は、元祖雑草・西本聖をしのぐ投手に成長できるか

 背番号「90」を受け継ぐ、巨人の育成の星・戸田懐生(21)は、元祖雑草・西本聖をしのぐ大投手に成長できるだろうか。

 今年2年目を迎える戸田への期待は大きい。2020年のドラフト会議で、四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックスから育成ドラフト7巡目指名を受け入団。21年6月7日には背番号「90」で支配下登録され、同年は3試合ながら1軍の試合にも登板した。

 今キャンプでは1軍メンバーにも選ばれ、今月15日には新庄剛志ビッグボス率いる日本ハムとの練習試合に3番手としてマウンドに上がり、2回1安打無失点と好投した。

 巨人の背番号90で思い出すのは、第1次政権下の長嶋茂雄監督(現終身名誉監督)とかつて江川卓と並び巨人のエースとして活躍した西本聖である。

 西本といえば背番号「26」を着けて、人気野球漫画『巨人の星』の主人公・星飛雄馬を思わせる、左足を高く上げる投球フォームとシュートを武器に最多勝や沢村賞にも輝いた大投手である。だが、ドラフトで指名されたわけではなく、1974年にドラフト外で入団した、いわば正真正銘の雑草組だった。

 私は対戦チームの担当記者として、巨人時代やその後の中日、オリックスなどでの投球を見てきた。だが、1年だけ西本を担当記者として取材した経験がある。それは古巣・巨人の入団テストを受けるためキャンプに参加した94年のことである。再び一から這い上がろうとする西本を取材して原稿にした覚えがある。

 西本は3月1日にテストを受けて合格し、背番号「90」を与えられて巨人に復帰した。だが、ペナントレースでは登板のチャンスは与えられることなく、現役20年で通算165勝128敗17セーブ、防御率3・20という成績を残し同年10月13日にユニホームを脱いだ。

 巨人への貢献度を考えれば、球団主催の引退試合があっても不思議ではない選手だった。だが、巨人は中日と激しいペナント争いをしており、その話はいつしか立ち消えとなった。だが、翌年1月21日にかつての同僚だった定岡正二らが主催し、桑田真澄や与田剛(前中日監督)らも集まり、多摩川グラウンドで“手作り”の引退試合が行われたのだ。なんと観客が2000人も集まった。

 その試合には長嶋監督も参加していた。当初は始球式だけの予定だったが、背番号「90」の西本がノーノーを続ける七回二死の場面で代打として登場。三塁内野安打を放ち“大記録”の夢を打ち砕いた。その後、長嶋監督は「西本にはかわいそうなことをしたからね。シーズン中に、登板のチャンスを与えようと思ったんだけど(ペナント終盤)もつれちゃったからね」といいながら、着ていたオーストリッチ製のジャケットをプレゼントしたと記憶している。

 西本が背番号「90」を着けて、1軍のマウンドに立つことはなかった。だが、その「90」を受け継いだ戸田が、どう西本のように記録にも記憶にも残る投手になっていくのか、楽しみなところである。=敬称略=(デイリースポーツ・今野良彦)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

オピニオンD最新ニュース

もっとみる

    ランキング

    主要ニュース

    リアルタイムランキング

    写真

    話題の写真ランキング

    注目トピックス