【スポーツ】卓球新王者の20歳・戸上隼輔、プロレスから学んだ“強気発言”で成長「日本背負う覚悟ある」

 男子シングルスで初優勝し、バンザイする戸上隼輔(撮影・佐藤厚)
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 “ポスト東京五輪”の戦いとなった、卓球の全日本選手権(東京体育館)最終日。男子シングルス決勝で、21年世界選手権代表の戸上隼輔(20)=明大=が元日本代表の松平健太(30)=ファースト=を4-2で撃破し、初優勝を果たした。24年パリ五輪代表入りへ大きくアピールしたホープは「日本を背負う覚悟を持っている。自分が引っ張っていく」と力強く宣言した。

 台から下がっての力強いフォアハンドを連続で振り抜き、経験豊富な実力者を沈めた戸上は、観客席に向かって両手を広げた。勝利を誇示する堂々たる姿は、どこか“レインメーカー”ポーズを思わせた。

 目を見張る攻撃プレーだけでなく、さらに周囲を驚かせたのが、優勝直後の場内インタビュー。「水谷選手が(現役引退で)いなくなって、でも僕はプラスに捉えて、1つ(日本代表の)枠が空いたと思っている。パリ五輪は僕が引っ張っていく。日本を背負う覚悟を持っているので、張本選手とか(強い選手が)たくさんいるが、自分が引っ張ってやろうという強い決意がある」。観客や関係者が一様に聞いている前で力強い言葉を並べ、会場をどよめきと笑いに包んだ。

 口ぶりは優しく、表情も柔らかで、一見ソフトな印象を与える好青年。だが、出てくる強気発言とのギャップが小気味いい。以前は弱気だったというものの、昨年の代表選考会で振るわなかったことを機に自身の内面と向き合った。「強気な発言で自分を追い込めば、ハングリー精神も自然と出てくると」。あえて自分にプレッシャーを掛けるような物言いを選ぶようにすると、試合でも実力を出せるようになったという。

 その背中を押したのが、大ファンだと明かすプロレスだ。プロレスラーの試合後のバックステージでの歯に衣(きぬ)着せぬ物言いに勇気づけられてきた。自身もプロレスをまねて強気な発言をするようになってからは「緊張した場面でも強気なプレーができたり、格上選手に対しても臆することなくプレーできたり。プラスに考える機会が増えた」と言う。

 特に新日本プロレスの内藤哲也や棚橋弘至に憧れを抱いているといい、「棚橋弘至選手はみんなに愛されている。僕もそんな選手になりたい。憧れの人物像がプロレスにはたくさんある」。“100年に1人の逸材”を自称し団体エースに登りつめた棚橋と自身を重ねるかと水を向ければ、「もちろん『(卓球界の)100年に1人の逸材』の戸上隼輔です」と呼応し、笑わせた。

 プロレス好きといえば、引退した東京五輪金メダリストの水谷隼さん(32)も有名だ。観客を楽しませるようなリップサービスで卓球男子を“冬の時代”から盛り上げ、五輪メダルを手土産に現役を退いた今もそのトークスキルでテレビを席巻。また、「血を見ると闘志が沸き立ってくる」と、デスマッチを実施する大日本プロレスの試合会場にもよく足を運んでいた。

 プロレス好き、名前に「隼」が入っていることなど、全日本選手権を10度制したレジェンドと重なる点も多い。国際大会での経験がこれからの課題だが、ダブルスとの全日本2冠で五輪団体戦にも期待が膨らむ戸上は「自分の中では日本を背負って戦う覚悟もできている。誰よりも強い気持ちを持っている自信はある」と言い切る。

 卓球界に突如現れた“太陽のエース”候補。今はやや大言壮語に聞こえたとしても、強気発言がいつか有言実行となる日が待ち遠しい。(デイリースポーツ・藤川資野)

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