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【野球】8月末まで県立高校で教頭 異色の広島カープ球団職員・土井一生さん

 今年9月から広島東洋カープの球団職員として働く土井一生さん(59)。8月末まで佐賀県の県立高校で教頭をしていた、異色の経歴の持ち主だ。数学教師だった経験から、編成部で統計に基づいた選手個々のデータ分析を行う日々。大の鯉党で目指すは選手のためになる「数字」の提供。カープで第2の人生をスタートさせた元教頭先生に迫った。

 佐賀県の教職員として30年以上働いてきた土井さん。「定年後、何か違った自分に挑戦できないかと漠然と考えていたところ、インターネットでカープの求人を見つけたんです。ただ、受かるとは思わなかったので、自分がカープに関わることに応募するだけで、少し満足したような気持ちでした」

 ところが、数学教師として統計学を扱ってきたキャリアが評価され見事に採用、編成部に配属された。現在は主幹の肩書で、主な業務は試合で計測した選手のデータを分析し、戦術と選手育成で生かせる「数字」を導き出すこと。投手の球の回転数、リリース時の腕の高さなどを綿密に集計して「この選手は調子が落ちてきた時、どの数字が下がってくるか相関関係を見つけていくんです」。調子のバロメーターとなる数字を導き出すことで改善点を洗い出す。

 日々、仕事を通して新たな野球の発見も多い。「150キロを投げる投手が、簡単に打たれる時があるのは不思議な世界。私は一野球ファンでしたので、打率、本塁打、出塁率など一般的な指標しか知らなかったんですが、選手を評価する指標がこんなにたくさんあるのかと。“目からうろこ”ということが多いですね」

 統計学の魅力は「世の中のいろんな変遷を可視化できること」だという。ただ野球は人間が行うスポーツ。数字だけを追いかけることはせず、選手の思いや感覚、首脳陣の経験を最優先することの重要性を強調する。

 その考えは教師時代の経験があるから。「数字だけに偏ってはいけない。人の感覚、経験と客観的数字を融合させることが大切なんです。授業も生徒の理解、気持ちを確認しながら進めないといけない。そういう部分は今の仕事に通じている。相手の気持ちに添わないと何の意味もないと感じています」

 小学生の頃、同級生はみんな巨人ファンだった。新聞のスポーツ欄でセ・リーグの順位表を見るたび、広島が常に最下位にいて、そこに魅力を感じた。「ものすごく惹かれた覚えがある」。1975年、中学1年の時に広島は初優勝。ラジオ中継で必死に応援した。「九回にホプキンスが3ランを打ってね。鮮明に覚えていますよ」と懐かしんだ。

 教頭を辞める際、生徒の前で「夢を追わせてほしい」とあいさつした。「役に立つデータをいろんな人と相談しながら絞り出し、説得力のある指標として伝えられるように。『ああ、なるほどね』と言ってもらえることが一つの目標ですね」。学校からプロ野球、生徒から選手に対象が変わっても思いは同じ。それぞれの選手にとっての“最適解”を導いて、大好きなカープに貢献していく。(デイリースポーツ・向 亮祐)

 ◇土井一生(どい・かずお)1962年10月27日生まれ。佐賀県小城市出身。佐賀県立小城高から法大工学部に進学。佐賀大大学院工学系研究科修士課程を経て、中学、工業高校電気科などで教べんを執る。球団職員に転職する前は伊万里商業高で教頭を務めていた。家族は妻と一男一女。

 土井さんはデータ分析以外の仕事にも意欲を示す。教師時代に「学校心理士」という民間資格を取得しており、カウンセリングなどを通じて生徒たちのメンタル面をケアしてきた。その経験をカープでも生かすつもりで「特に若い選手に関わって、人間育成という部分にも寄与していきたい」と、公私両面で選手をサポートしていく考えだ。

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