【野球】障害の有無は関係なし 垣根を越えて進む「甲子園夢プロジェクト」

 壮大な目標へ、また新たな一歩を刻んだ。全国の知的障害がある生徒の硬式野球挑戦をサポートする「甲子園夢プロジェクト」は14日、都内で世田谷泉高校軟式野球部との合同練習会を開催。同プロジェクトにとって初めて“健常者チーム”とのプレー機会となり、両者合わせて30人弱の選手がともに汗を流した。

 知的障害の有無など彼らにはまったく関係なかった。午前9時30分から練習スタート。アップから全員が混ざり、ティー打撃や内野と外野に分かれたノックなどを3組に分かれてこなしていった。試合形式のメニューも敢行。ティーボールでのゲームに加え、最後の1イニングは同プロジェクトと同校野球部での“対決”で締めくくられた。

 レベルには個人差があれど、普通の高校球児も顔負けの動きを披露する選手も少なくない。京都から参加の白河総合支援・村田敦さん(3年)は投手として世田谷泉の選手から三振を奪い、大きくガッツポーズした。

 すでに引退したが、同校の軟式野球部でプレーしてきた。力強い速球に加え、カーブ、スライダー、フォークを操る。健常者との対戦に「考えて投げるんですけど、(相手も)考えてくるので」と配球面の課題を感じ取った。

 捕手を任されたのは相模原中央支援・説田隼也さん(3年)だ。小、中でも軟式野球をやってきたが、主に内野手や外野手。扇の要の経験はほとんどない中、キャッチングやブロッキングを難なくこなした。高校ではプレーする環境がなかった分、「毎回、楽しみです」と喜ぶ。同プロジェクトにも自ら連絡して参加した。

 「ある程度、遜色なくできることがわかった」と発起人である久保田浩司氏も手応えをつかんだ。知的障害がある生徒を受け持って34年目。社会人野球の指導歴もある中、培ってきた信念が再確認された。

 指導者として関わる元ロッテ投手の荻野忠寛氏も「どんどんうまくなっていると思う」と3月からの成長ぶりを評価した。「いろんな人とやるのは刺激になる。そういうところがスポーツのよさ。健常者のチームも勉強になるところはある」と双方へのメリットにも力を込める。

 実際、今回の相手・世田谷泉高校にとっても有意義な時間となった。01年4月に開校された定時制の「チャレンジスクール」。不登校や中途退学を経験した生徒が通う。「やってよかったな、と。いろんな人と接していないのが弱点。(普段)しゃべらないやつがしゃべっていたので」と石川大貴監督。この交流から刺激は確かに生まれている。

 同プロジェクトの最終目標は、特別支援学校の単独チームによる高校野球の公式戦出場だ。ただ、「こうやって、合同練習ができたのは大きい」と久保田氏。参加者も20人まで増えた。来月には硬式野球チームとの練習も予定。ひとつひとつ垣根を越えることで、大きな夢へと近づいている。(デイリースポーツ・佐藤敬久)

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