【野球】鯉党の岸田新首相誕生 25年ぶり優勝年にカープレジェンドの優しさを思い出す

 臨時国会が4日招集され、衆参両院本会議の首相指名選挙で自民党の岸田文雄総裁が、第100代内閣総理大臣に選出された。父親の影響で50年来のカープファンを公言する新首相。広島が25年ぶりに優勝した2016年のある出来事を思い出した。

 今から5年前になる。優勝特集紙面のためデイリースポーツ評論家・安仁屋宗八氏にかつての優勝監督である古葉竹識氏、阿南準郎氏、山本浩二氏の3人との対談をお願いした。それぞれ東京のホテル、広島のホテルそしてマツダスタジアムと日時と場所を変え、元監督から過去のおもしろい話を聞かせてもらった。

 当時、外務大臣だった岸田新首相とのからみは、安仁屋氏と阿南氏の対談日のことだった。神戸から編集局長もかけつけホテルのレストラン個室を用意した。わが社にとってVIPへの最高のおもてなしをと考えていた。ロビーで両氏と待ち合わせ、エレベーターでレストランに向かうときだった。

 ホテル関係者がエレベーター前に立ち、扉を開けて待っていた。さすがカープレジェンド、と思ったのもつかの間だ。

 「壁沿いに寄って通路をあけてください」

 安仁屋、阿南両氏や編集局長の重鎮が、エレベーターホールの壁沿いに立たされた。もちろん私も…。そこにやって来たのが岸田外務大臣だった。

 ロビーを見渡すとSPらしき人が立っており、なにやら会合が行われるらしい。このままエレベーターに乗り込まれると、わが社が対談をお願いしたレジェンドに失礼なことをしたという悪い思い出だけが残るのだが、そうではなかった。

 エレベーターに向かう岸田外務大臣が壁際に立つ安仁屋氏を見つけると歩みを止め「安仁屋さん、ご無沙汰しています。今日は何があるんですか」と握手を求めてきた。安仁屋氏は阿南氏との対談を説明し、阿南氏を岸田外務大臣に紹介。「カープ、調子いいですね」と短い時間ではあったがレジェンド2人と談笑した後、エレベーターに乗り込んだ。

 この会話にばつの悪そうな顔をしていたのがホテル関係者だ。「失礼いたしました」と断りを入れ、エレベーターのボタンを押した。わが社のVIPを壁際に追いやったホテル関係者に対し怒りを覚えていたが、レジェンド2人の振る舞いとホテル関係者の顔を見るとなんだか、スカッとした気分になった。

 実は阿南氏に対談を依頼した際、「僕は表に出なくていいですよ」「年寄りが出る出番ではない」と交渉が難航した。どこまでも控え目な阿南氏に「優勝監督が一人でも欠けたら困るんです」と泣き落としでなんとか承諾してもらった経緯もあった。

 そんな阿南氏にホテル側の都合ではあるが、壁際に立たせた失礼をわびると「いいよ」と笑顔を見せていただくとともに、紳士的な振る舞いには感謝の念しかない。会食をしながらの対談も86年の優勝秘話や25年ぶり優勝に突き進むチームへの愛情タップリの話も聞くことができた。

 安仁屋氏によると町内会のお祭りで岸田夫人の裕子さんを通じて顔見知りになったとか。安仁屋氏は「奥さんがしっかりしている」とファーストレディーとなる裕子さんを持ち上げていた。

 岸田新首相の誕生で、カープレジェンドの優しさを思い出した。(デイリースポーツ・岩本 隆)

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