【野球】ヤクルト・奥川ら高卒2年目投手の活躍でよみがえるルーキー石井一久の“快挙”

 ヤクルト・奥川恭伸(20)、ロッテ・佐々木朗希(19)、阪神・及川雅貴(20)、西純矢(19)らプロ2年目投手の活躍で、改めてプロ1年目のヤクルト・石井一久(現楽天取締役GM兼監督)=(47)=の“快挙”がよみがえってきた。

 2019年度ドラフト組がブレーク中だ。7日には、奥川が甲子園での阪神戦で7回2安打無失点、8奪三振の快投を演じた。奥川、佐々木、及川、西純矢はチームが優勝争いをしており、もしペナントレースを制すれば、11月20日から始まる日本シリーズのマウンドに立つチャンスは十分にあるだろう。

 唯一、残念なのは10代での日本シリーズ登板を逃すことぐらいだろう。佐々木は11月3日に、西純矢も9月13日に20歳の誕生日を迎えるため、この“快挙”にわずかに手が届かない。

 高卒1年目でのシリーズ先発は、1953年の南海(現ソフトバンク)の中村大成(77)、56年の西鉄(現西武)の故稲尾和久、66年の巨人の堀内恒夫(73)、日本ハムの吉川光夫(33)の5投手しかいない。また、過去30年を振り返っても10代で日本シリーズに先発登板したのは、巨人の桑田真澄(53)、ヤクルトの石井一久、日本ハムの吉川光夫(33)の3人のみである。

 桑田は4月1日が誕生日だった関係で、プロ2年目での登板だったが、シーズン15勝6敗の成績を残した。また、吉川もシーズン後半ローテに入り4勝(3敗)を挙げてのマウンド。シリーズでの先発にあまり違和感はない。

 だが、石井一のケースは違う。まさに、ノムさんこと故野村克也監督の“奇襲”の産物だった。石井一は1992年10月21日、西武ライオンズ球場での西武との第3戦で、史上初の「レギュラーシーズンで未勝利の高卒新人のシリーズ先発登板」を果たしたのである。

 背番号「16」を与えられ、東京学館浦安高から91年のドラフト1位で入団した石井一は、高卒プロ1年目のシーズン12試合(先発は5試合)に登板。0勝0敗、防御率4・18でレギュラーシーズンを終えていた。

 石井一は三回まで無失点に抑えたが、四回にオレステス・デストラーデ(59)、石毛宏典(64)に連続適時打を浴び敗戦投手になった。だが、25日の神宮球場で行われた第6戦では2番手としてマウンドに立ち、その将来性は十分にアピールした。

 この年、ヤクルト担当だった私はアリゾナ・ユマキャンプから「野球をやっていなかったら、高校には進学していなかった。中学でそのまま就職してたかも」というような発言を何度も聞き、驚かされた。また、オープン戦で150キロ近い速球を記録しても「スピードガンが壊れているんじゃないですか」と表情ひとつ変えなかった。さらに、広島とのオープン戦で、首位打者を取ったこともある高沢秀昭(63)に本塁打を打たれたが「ホームラン?誰に打たれたんだっけ?」と首をかしげたこともあった。

 その後の石井一については、語る必要がないだろう。ノムさんの“奇襲”から生まれた“快挙”は、大投手を1人産みだした。=敬称略=(デイリースポーツ・今野良彦)

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