【野球】骨折しながら本塁打 巨人入り表明の梶谷隆幸はド根性の持ち主

 巨人は11日、DeNAからFA宣言していた梶谷隆幸外野手(32)から入団の意向を伝えられたことを発表した。今後、正式契約を結ぶ。梶谷ってどんな人?一見して、飄々(ひょうひょう)としたイメージ。そんな男が勝負にかける凄まじい熱い魂を見せつけたことがあった。

  ◇  ◇

 忘れられない光景がある。DeNAは2016年、球団として初めてクライマックスシリーズ(CS)に進出した。ファーストステージで巨人を2勝1敗で下し、ファイナルステージで広島と対戦。日本シリーズ出場こそ逃したが、奮闘した梶谷の姿があった。

 巨人とのファーストステージ第3戦。梶谷は初回の第1打席で左手薬指に死球を受けた。そのまま交代し病院に直行。診断結果は最悪だった。左手薬指末節骨の骨折。ファイナルステージの出場は絶望的とみられていた。

 だが、ファイナルステージが行われるマツダスタジアムにその姿はあった。試合前の練習中には「誰かに骨を貸してほしい」と冗談っぽく言いつつ「グラブを入れただけで痛い」と本音も漏らしていた。

 打撃用のグローブは小指と薬指部分がなかった。テーピングで厳重に1つにまとめて固定した指2本を出すためだった。耐えがたい激痛はバットにボールが当たる瞬間に、左手が離れてしまうほど。それでも2安打を放ち奮闘した。「僕自身は全部出るつもりでやります」。そう宣言した。

 第2戦の試合前。笑顔で披露したグラブは、手の甲側の一部が大きくカットされていた。2年以上愛用し続けてきた大事なグラブ。「(患部が)圧迫されて痛むので。愛着のあるグラブなんですが、今年でおしまいですね」。ちょっと寂しそうな表情を見せながらも、試合にかける思いを示していた。

 連敗を喫し、あとがなくなった第3戦。八回2死満塁の危機。梶谷は右邪飛に対して身を投げ出してダイブ。フェンスに激突しながら、痛む左手でつかんだボールを意地で離さなかった。

 「ボールしか見ていなかった。フェンスがどこにあるかも分からなかった」と振り返り、「(患部を)下に突いたっす」と苦笑い。その痛みは、自分でグラブを外せないほどだったという。

 打撃でも貢献した。2点リードの五回、目の前で筒香が歩かされて迎えた2死一、三塁。「両手で振ってやろうと思って、ちょっと気合を入れていきました」。右前適時打で貴重な追加点。「(左手が)何とかついていってくれた」。激痛に耐えて、最後まで両手でスイングした結果がタイムリーになった。

 「もう(骨が)折れていますから。次、折れてもどうってことない。腹をくくって、あとは根性。気力で勝ちます」。崖っぷちでつかんだ1勝だった。

 DeNAは第4戦で敗れ、このシーズンの終戦を迎えた。初回に6点を失う展開。梶谷は三回に追撃の2ランを放つ執念を見せた。「燃え尽きないで終わった。負けたら悔しさが残る。これが来季のモチベーションになる」-。

 この年限りで、記者は担当を外れた。後日、あいさつに行くと「担当が変わっても応援してくださいね」と笑顔を見せてくれた。似合っていたベイスターズの青いユニホームに別れを告げて、選んだ新天地。尽きない反骨精神を見せてくれるに違いない。(デイリースポーツ・鈴木創太)

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