【野球】楽天 夢実現へ思いはひとつ「直人さんのために」

 直人のために-。3位からの逆転CS、さらに優勝を目指す楽天。そのチームの中で、今季限りでユニホームを脱ぐことを決めた、球団草創期を支えた名バイプレーヤーの存在が大きくなっている。

 渡辺直人内野手(39)。12日に今季限りでの現役引退を公表。翌13日に楽天生命パーク宮城で行われた会見でも、その誰からも愛された人柄がにじんだ。

 会見で語られたのは周囲の人々への感謝、そしてチームへの愛情。「絶対に泣かないって決めていたのになぁ」と話した渡辺直が感謝の涙を見せたのは、楽天球団への思いに話しが及んだ時だ。

 「最後にまた楽天のユニホームを来て引退するのは自分の夢だった」と渡辺直。そして「楽天にいた時も、他球団に移ってからも仙台でプレーする時は大きな声援をいただいて…その声援に助けられ、その声援に応えたいと。本当に勇気を与えてもらった」と言葉を詰まらせ、涙を流し、感謝の言葉を紡いだ。

 球史に残る成績を残した選手ではない。だが、昨年から担当記者となって感じたのは、その存在感の大きさだ。首脳陣、選手、球団スタッフ-立場に関係なく信頼を置く。それが渡辺直人だった。

 横浜(現DeNA)、楽天でともにプレーしてきた藤田は「駄目なものは駄目としかってくれる人。僕も成長することができた」とし、同じ“松坂世代”の久保は「どんな時でも人を笑顔にできる無邪気さ、誰に対しても本気でぶつかっていける心の強さ、何より野球に対する熱くてまっすぐな思い。心から尊敬できる」と語った。

 昨季は右足首脱臼で6月に戦線離脱。2軍でのリハビリ中に話をしていても、常に出てくる「今、チームの雰囲気はどうですか?」と、仲間を気に掛ける言葉だった。チームが苦戦していた9月21日・西武戦(楽天生命)。藤田や浅村の要望で試合前ミーティングに参加。熱いゲキを飛ばし、2年ぶりCS進出へ背中を押した。

 「最後までチームが勝つためのピースとして、自分ができることをやっていきたい」。それを体現し続けた14年間だったと言える。

 兼任コーチとなった今季は試合出場こそないが、三木監督も「直人の引退発表から、みんなの気持ちが1つになっている。直人がベンチの真ん中で鼓舞してくれているが、その気持ちに選手が応えようとしている。大きな力だと思う」とチームに与える影響の大きさを語っていた。

 夢だったと話す楽天での引退。だが、もう1つの大きな夢が残されている。「優勝して、みんなで喜び合いたい」。西武時代から渡辺直を兄のように慕う浅村も「最後まで直人さんのためにやりたい」と強い思いを示す。シーズンは30試合以上を残す。渡辺直の献身に報い、引退への花道を彩るために戦う時間は、十分にある。(デイリースポーツ・中田康博)

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