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【野球】日本屈指の進学校、開成野球部監督の「最終公式戦」への熱い思い

 東京都高野連は今夏の甲子園開催可否にかかわらず、東・西東京大会を実施する方向性を固めた。具体的な感染防止対策を含めた開催要項については、今後協議する予定だ。東東京の開成・青木秀憲監督(48)は「この時点で(大会を)行うという方向で声に出していただいた。不安を抱えながら自主練習に励んでいる選手たちは安心すると思う」と大きな一歩と受け止めた。

 青木監督が同校の体育教師を務めながら野球部の指揮を執る開成とは、東大合格者数39年連続日本一を誇る、あの開成である。超進学校であっても、毎年初戦敗退を繰り返すような弱小チームではない。東大野球部OBの指揮官が極端な打撃重視の方針を掲げ、2005年には東東京大会16強入り、07年と12年にも4回戦進出を果たしている。決して受験勉強の片手間などではなく、3年夏の大会まで各部員は本気で野球に取り組んでいる。

 中高一貫の私立校である開成は、緊急事態宣言の発令下にあっても休校措置は取っていない。4月からの新学期は教室での対面授業ではなく、オンライン授業で進めている。生徒は登校しないため、部活動の練習などで集まることもない。通常でも週1日の全体練習は全くできていない。学校施設を利用した自主練習もかなわない。もともと限られた練習環境がさらに厳しくなっている。

 春季大会に続き、夏の選手権大会も開催できないのか。今年の3年生はこのまま引退に追い込まれるのか。甲子園常連の強豪校も開成のような進学校も、特に3年生部員にとっての“最後の夏”、“最後の公式戦”はそれぞれの立場で重要な意味を持ち、競技人生の大きな節目でもある。だからこそ、青木監督は「こういう状況で最後の大会がないとなると、いくら『我慢しろ』と言っても生徒には傷が大き過ぎる。何とか最終公式戦の場をつくってほしい」と切実に訴える。

 青木監督は自身のフェイスブック上に「現高校3年生の最終公式戦をどのようなかたちでも確保する」という主旨の提言を投稿している。「多くの方々が今日明日の命を守る活動に必死な状況で、のんきに野球の話をすることは不謹慎のそしりを免れませんが、感染の終息が見えてから考え始めるのでは手遅れともなりかねません」と断りつつ、長文で熱い思いをつづっている。

 「8月の全国高校総体の中止が発表されました。しかし、この流れを受け、何らの模索もなく『右へならえ』で夏の甲子園大会ならびに都道府県予選が中止になることを私は危惧しています」と書き出している。たくさんの競技の複合的行事である高校総体と違い、野球単独大会のため「柔軟な対応ができるはず」と指摘する。「常識外れな発想や各方面に少々無理を強いることも選択肢に含めつつ、模索する必要があります。あらゆる常識から解放されればその時間はまだあります」とし、いくつかの具体例も挙げている。

 「夏の全国大会を8月開催にこだわらない」、「球場は甲子園でなくてもよい/全国大会はなくてもよい」と大胆な私見も披露。それぞれの利点と問題点も詳細に検証している。ほかにも、特に地方大会でどうしても試合日程を短期間で消化しなければいけない場合は「この際1試合9イニングでなくてもよいと思います。5イニングでも7イニングでも」とも提案している。

 青木監督は決して全国大会および甲子園大会を軽視しているわけではない。思いはただ一つ、「3年生の最終公式戦をどのようなかたちでも確保する」に集約される。「全部員が関係する都道府県単位の大会こそ確保してほしい」と声高に主張する。

 「全く見当はずれな考えもあると思います。これを指摘していただいたり、新しい考え方や案を多くの方が持ち寄り議論することが『模索』です」、「感染や医療現場の状況に合わせて、その現状で許される最大限のことを模索する努力は必要なのではないかと思います」と、「模索」の意味と「模索する努力」の必要性を説いている。

 全日本大学野球連盟は5月12日、全日本大学野球選手権大会の中止を発表した。当初の6月開幕予定から8月12日に延期となっていたが、協議の末に開催を断念した。日本高野連は5月20日に全国高校野球選手権大会の第2回運営委員会を実施予定。既に東京都高野連が開催の方向性を打ち出している今夏の東・西東京大会は、例年通り甲子園切符を懸けた“地方予選”となるのか。重い決断のリミットは迫っている。(デイリースポーツ・斉藤章平)

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