【野球】ヤクルト村上、弱音と涙をアーチに変えた反発力

 ヤクルト・村上宗隆内野手(19)の大ブレークは、今季のプロ野球の大きなトピックの一つとなった。高卒2年目にして全143試合に出場し、36本塁打、96打点。盗塁王の阪神・近本を抑えて新人王を獲得した若武者の飛躍は、流した悔し涙をアーチに変える反発力が支えていた。

 一瞬、耳を疑った。村上の口から出た言葉が、意外だったからだ。「ストレスはたまりますよ。僕だって人間ですから」。7月3日の広島戦(マツダ)。試合前の練習後、何人かの記者の問い掛けに通路で足を止めた。自虐的な笑みを浮かべ、漏らしたのは弱音だった。それまでも、打てない期間はあったが、同じような取材状況では、後ろ向きな発言を聞いたことがなかった。だから、印象に強く残った。

 弱さをのぞかせていた理由は、少し後に分かった。4番に座った前日2日の試合は4打数無安打1三振。その試合後、首脳陣に厳しく叱責されていた。指摘されたのは、結果ではなく姿勢だった。試合前練習では、やるべきはずのメニューを一部こなしていなかった。打席もチーム打撃を心掛けたとはいえない内容。反論の余地はなく、自分への腹立たしさも交じってか、人目もはばからず悔し涙を流したという。

 そんな事実があったから、改めて感嘆した。弱音を吐いた数時間後の試合で、自身初の満塁弾を放って20号に到達。5打点の大暴れで、連勝の立役者となっていた。19歳らしい満面の笑みがこぼれた背景に、ようやく合点がいった。

 堂々たるプレーと態度に、ついつい忘れてしまいがちだった。まだ成人もしていない、社会に出て2年目の若者。弱音を吐くのも、悔し涙を流すのも、当たり前のことだ。村上がすごいのは、それをすぐさまプレーの原動力に変えて結果を出したこと。“令和の怪童”とも称されるゆえんだと感じた。

 11月のファン感謝デーでは、先輩選手からも「よく泣いていた」とイジられて笑っていた。涙の数だけ強くなった若き大砲。これからも真っすぐに伸びていってほしい。(デイリースポーツ・藤田昌央)

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