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【スポーツ】補欠から五輪へ、マラソン前田穂南のくじけない力

 東京五輪の男女マラソン代表選考会「グランドチャンピオンシップ」(MGC)の女子は、前田穂南(23)=天満屋=が中盤から独走して2時間25分15秒で優勝した。23歳のニューヒロインが高校時代に3年間補欠だったことはよく知られている。しかし、優勝会見でその点を聞かれても、前田は「走るのが好き。長い距離を走るのが好きなので(マラソン)がよかった」とポツポツと話すだけ。補欠からはい上がった反骨心やハングリー精神のようなものはまったく見せない。

 大阪薫英女学院高の恩師で同校陸上競技部の安田功監督(58)は「補欠だと言われるが、他校ならエース級だった」と振り返る。ただ、強豪薫英では、5人で都大路を走る全国高校駅伝で常に6番手。前田の最終学年、安田監督は最後の一人を2年生の前田梨乃(現豊田自動織機)とどちらにするか悩んだという。「最後は僕の判断で2年生を使った。前田穂南は長い距離を走れるけど、爆発力が2年生の方があるかなと考えた」。実際、2年生の前田梨乃の好走が勝因の一つとなり、同校初の大会制覇を果たした。

 安田監督が驚くのは、毎年メンバーを外れても、前田が一度も悔しさを見せなかったことだ。「負けて泣く時は誰かに負けて悔しいと思うものだが、彼女は他人と比較することがない。自分の陸上を追求し、自分との戦いに挑んでいく」。卒業するまで、黙々と走る練習態度は同じだった。

 先に見据える目標があったのだろう。MGCの優勝会見で前田は「マラソンで五輪に出て世界と戦いたいという強い気持ちがあった」と明かした。高卒で実業団に進む選手の多くは3年生になるまでに進路を決めるが、前田は決断が少し遅かった。それは、大学進学をすすめる両親と話し合ったためだった。実業団へ進路を決めた時、前田が安田監督に唯一望んだのが「マラソンが強くて一番練習がハードなところ」。3年間の補欠生活でも自分を信じ続けた。その“くじけない力”を伸ばせる場所だった。

 日本女子の実業団で最多となる、5人の五輪代表を輩出した天満屋の武冨豊監督(65)は、前田の入社からの5年間を「競技のことをすべて生活の一部にしている。余分なことに手を出さずにしっかり集中できている」と感心する。東京五輪本番では、2004年アテネ五輪金メダルの野口みずき以来16年ぶりとなる女子のメダルがかかる。残り一年、前田がどう自分との戦いに挑むのか。補欠の“くじけない力”を世界で証明してほしい。(デイリースポーツ・船曳陽子)

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