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【スポーツ】浪速のジョーの言葉、愛のムチと親心と

 ボクシング元WBC世界バンタム級王者・辰吉丈一郎(49)の次男、寿以輝(22)=大阪帝拳=がデビューから12連勝を飾った。26日に大阪でスーパーバンタム級8回戦を行い、藤岡拓弥(26)=VADY=を3-0判定で下した。陣営の吉井寛会長は年内に日本ランカー上位との対戦を視野に入れていることを明かし、来年の日本王座挑戦の可能性も浮上した。

 プロ4戦目で日本王座、8戦目で世界王座を獲った“浪速のジョー”とは別の道を歩む寿以輝は、デビュー時から「僕は父ちゃんとは違う。自分は天才肌ではない」と言っていた。持ち前のパンチ力は父譲りだが、華麗なフットワークや卓越した技術をデビュー時から備えていたわけではない。アマ経験もなくたたき上げの道。だからこそ1試合ごとに課題を挙げ、克服しようとしてきた。

 そんな息子への父の言葉は、試合を重ねるごとに意味深くなっている。“2世”という注目の中でのデビュー戦では「これがプロや」。その後も「これでは金は獲れん」「ようやくボクシングの本質がわかってきたか」と変化しつつもぶっきらぼうで厳しいものだった。ただ、最近の試合では技術的なアドバイスも増えている。ボクサーとしての成長を認め、愚直に自身の背中を追う息子に向き合っているようにも見える。

 今回は寿以輝が左拳を痛めていたこともあり、近距離での乱打戦となった。KOで仕留められなかったことに「連打はできてもコンビネーションができない。強打者のパンチは慣れる。コンビネーションと連打を一緒に考えたらアカン」と指摘。「強弱が大事。今は1から10の強さの中8、9の力で連打している。9、6、4、3と(変化させて)打つから9が生きてくるんや」と単調になりがちな攻撃を課題に挙げた。

 一方で親心は隠せない。強打者の宿命、拳の故障には自分も苦しんだ。今も左手の甲にはゆがんだ骨が浮き出ている。「左は一番大事。ジャブにはストッピングジャブや突き放すジャブ、カウンタージャブといろいろある。でも、痛めてしまうと全部チャラや」。腫れた拳をアイシングする息子を横に「できればきちんと治るまで動かしたくないんやけどなあ」。それでも戦い続けるのがボクサーの本能。「左を痛めても、足を使って相手を前に来させるとかそういうパターンができる。まだそこができてないんやな」とキャリア不足がもどかしい。

 デビュー直後の寿以輝は試合後の“お小言”を「うるさいなあ」としかめっ面で聞いていた。しかし、この日の控室では父の姿を見てホッとしたような表情を見せた。寄り添い合って戦う2人の姿は、丈一郎と亡き父粂二さんに重なる。寿以輝が故障を苦戦の理由に挙げなかったのも、辰吉の血だろう。取材の最後。「左拳のケガは父ちゃんと同じやね」と言う記者に、寿以輝は「うん」とどこか誇らしげに笑った。(デイリースポーツ・船曳陽子)

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