【野球】楽天のトレードから見えてきた石井GMの驚くべき決断力と行動力
正直、驚いた。7日に巨人と楽天の間で成立した交換トレード。楽天は和田恋外野手(23)を獲得し、巨人へ古川侑利投手(23)を放出することになった。このタイミングで若い先発投手を出すのか…。驚きはそこだ。
石井一久GM(45)の答えは明確だった。「古川選手は1軍での実績もある。トレードにはリスクもあるんですけど、やっぱり僕はそこは挑戦だと思う。挑戦にはリスクが付きものだが、果敢にチームを変えていきたいというのがあった」。
今季はオープン戦中の3月に則本昂が右肘を手術。開幕戦では岸が左太もも裏を痛めて約2カ月間の離脱。先発投手の駒不足が課題だった。いや、故障は関係なくとも則本昂、岸に中堅の美馬、辛島、塩見。それに続く、若い先発の台頭はチームの懸案事項だった。
その中で古川と言えば、プロ5年目の昨季に18試合(先発17試合)で4勝9敗、防御率4・13の成績を残し、今季は1勝2敗、防御率6・34ながら、先発ローテ候補の投手として期待を受けてきた。
ただ、石井GMは「古川選手も10勝を挙げることができるかもしれない。和田選手も将来、主軸を打てるかもしれない。どちらの“かもしれない”が大事かと言えば、今のチームにとって和田選手の“かもしれない”に賭けなければいけない」と説明した。
思い切った決断だ。先発投手の台頭も大事だが、将来の主軸となれる可能性がある野手の獲得は、それ以上に難しいと言える。そのチャンスをつかむためにリスクを覚悟で歩を進める。それが変革だ。驚きは消え、妙に腑(ふ)に落ちた。
楽天は昨オフにFAで浅村を獲得。則本昂とも7年の長期契約を結び直し、中期的な観点でチームの軸となる選手を確保した。一方で今シーズンを戦うチームで右打ちの外野手が不足する中、広島から下水流をトレードで獲得している。
さらに石井GMは「今年のドラフトは投手中心(の指名に)なっていく」とし、それを踏まえて有望な野手の獲得を優先して動いた。驚くべきは先発の放出ではなく、決断力と行動力の方だった。
このトレードが成功となるか否かは、まだ分からない。今に目を向ければチームは交流戦終盤から10連敗(8日時点)と苦しんでいるのも事実だが、その未来は決して薄暗いものではないとも感じた。
(デイリースポーツ・中田康博)