【野球】今秋ドラ1候補の星稜・奥川恭伸 成長を示す夏の挑戦
大船渡・佐々木朗希投手(3年)に注目が集まる中、星稜・奥川恭伸投手(3年)も、夏の甲子園出場に向けてしっかりとキバを研いでいる。心身共に、確かな成長を遂げている。
「9回投げきれると最初は思ってなかったんですけど、9回投げきれて、完全に復活できたかなと思います」
そうやって自ら「完全復活」を宣言したのは、6月4日の北信越大会で優勝した直後のこと。決勝で敦賀気比を相手に9回7安打1失点11奪三振の完投勝利を収めた。唯一の適時打を許した敦賀気比の4番・木下元秀外野手(3年)に対しては、その後2度の対戦でいずれも三振を奪って見せた。
「(先制の適時打が)悔しかったので絶対に抑えてやろうと。倍にして返してやろうと思ってました。ピッチャーには、そういう気持ちが必要だと思うので」
残した結果だけでなく、そういった本能的な気持ちの面での高まりが何より大きい。さらに、自ら復活という言葉を使ったところにも意味がある。春のセンバツ後、4月中旬に右肩に軽い張りを感じたため、春季石川大会は一度も試合に出場することなかった。チームがエース不在で優勝した中、ベンチから試合を見守り、時に伝令役や外野手とのキャッチボール役を務めてチームをサポートした。
「自分にできることをしっかりやりたいなというのがあるので」と、「裏方」としてチームの一体感を高める役回りを率先して行った。そういった経験もあり「(夏の)大会の中でも楽しむことを忘れずにやれればいいかなと思います」と話すように、大切な仲間との最後の戦いとなる夏に向け、思いもより強くなった。
技術的な部分でも、曲がりがより小さく、より球速の速いスライダーの完全習得に励む日々だ。奥川としては、これがカットボールではいけないという。「カットボールでは(直球の)感覚がおかしくなるというか、まっすぐの感覚を残した上で。まっすぐがおかしくならない程度のスライダーを投げたいなと」。確かな考えの下での新たな試みだ。
夏の石川大会の初戦は、七尾東雲(15日・石川県立)に決定。「相手は関係ない。目の前の敵に集中したい」。今秋のドラフトでも1位候補となる右腕が、一回り大きくなって最後の夏に挑む。
(デイリースポーツ・道辻 歩)