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【野球】阪神・小野泰己 我慢の時を経て芽生えた覚悟と自覚

 少し肌寒い春風に吹かれて、マウンドへと帰ってきた。

 見えたその背中に、アナウンスよりも先にスタンドが沸き立った。阪神・小野泰己投手が思わず笑う。「ビックリしました。でもすごくうれしかったです」。背番号28。歓声と拍手に包まれる中、球場に「ピッチャー 小野」が響き渡った。

 5月2日-ウエスタン・オリックス戦(大阪シティ信金スタジアム)でのわずか1イニング。

 74日ぶりの実戦舞台に、何度もストンと肩を落とした。静かに息を吐く。「かなり緊張していました」。2月17日の日本ハム戦以来の実戦マウンドで、出番は2点リードで迎えた八回だった。注目の初球は外角の直球で見逃しストライク。そして三ゴロに打ち取った。続く頓宮にはフルカウントから四球を許すが、後続の4番・西野&5番・マレーロは内野ゴロに抑え切った。

 野球人生で初めて覚えた右肘の違和感、痛み。その不安を懸命に隠した。ノースローの期間は走り込みのメニューを強化。下半身強化に努めてきた。また食事にも気を配り、体重もこの日までに3、4キロアップ。久しぶりの登板でも、力強い速球を健在だった。

 この日の最速は151キロをマーク。「強いボールを投げようと思っていた。空振りもとれましたし…。結果ゼロで抑えられたのはよかったです」。言葉にはうれしさが込められる。投げられる喜び、そして改めて切った19年のスタート。結果以上に安堵(あんど)の表情を見せた。

 ルーキーイヤーから2年間、1軍のローテーションを守ってきた。昨季は1軍を完走し、7勝7敗。金本前監督には期待をかけられた。退任した前監督へ、今年は感謝の思いを伝える3年目にするつもりだった。だからこそキャンプ中には、違和感を覚えながらも練習を離脱せず。なんとかチャンスをつかもうと、懸命に腕を振り続けた。

 必死な毎日の中での離脱…。ライバルが投げ込む姿を横目に、「早く投げられるようになりたい」とつぶやいた。我慢の時を経て、キャッチボール再開、ブルペン投球再開。順調にステップを踏み前へと進んできたが、そんな中で改めて芽生えたのは投げられる楽しさだった。

 4月からは初動負荷トレーニングに従事している「ワールドウィング」へも通うようになった。阪神では鳥谷もトレーニングを続け、球界では元中日の山本昌や岩瀬など、長年プロ野球選手として活躍し続けたレジェンド投手らも通っていたジムだ。「可動域を広げようと思って」。限られた時間を、もっと有効的に使おう-。自ら考えて、インターネットで検索。数々の実績を誇る同ジムの門をたたいた。休みの日には欠かさず通い、少しずつ手応えも感じ始めているという。焦りは禁物、それでも思いは募っていった。

 「早く1軍で投げたい…。だからこそ2軍で結果を残さないと」

 戻ってきたマウンド。帰りのバスへと乗り込む際には、「おかえり、おかえり~」とファンからの温かい声援が飛び交った。もどかしさだけの日々に別れを。久しぶりにうれしそうに笑った。「次はしっかりコースにも投げ分けられるようにしたい」。

 出遅れた、だけでは終わらせない。覚悟と自覚…そして思わぬケガを経験した小野は、また一つ強くなった。(デイリースポーツ・松井美里)

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