【野球】阪神もかつては評価しなかった…大卒・社会人出身の“1球にかける”野球脳

 阪神の1軍宜野座キャンプで行われた紅白戦。思わずドラフト3位ルーキー・木浪=ホンダ=が見せた、遊撃守備のポジショニングに目を奪われた。

 打席には右の強打者・大山。その時、木浪は通常の守備位置よりも深い、内野と外野の境目となる芝生付近にポジションを取った。よほどスローイングに自信が無ければできないポジショニング。ただ、本当に驚かされたのは大山が2ストライクと追い込まれた後だった。

 芝生の境目付近から今度は3、4歩、前の位置にポジションを取った。結果的に打球は飛んでこなかったが「二塁、三塁、遊撃と全部守れる中でポジショニングというのは意識してやっています。打者の特徴を見ながら打球方向などを予測して変えています」と木浪は明かす。

 確かに追い込まれる前までは、打者は狙ったボールをフルスイングしてくる。特にプルヒッターの大山は、左方向に強い打球が飛んできやすい。逆に追い込まれれば、右方向にも打てるだけに、ポイントは若干、体の方に近くなる。

 そこに内角の直球が来れば、詰まってボテボテの遊ゴロになる可能性が高い。外角の変化球に泳がされれば、遊撃に強い打球は飛んでこない。そこまで見越したポジショニングを、プロに入って間もない紅白戦で見せたドラ3ルーキー。その動きを見て昨年、糸原をインタビューした時の言葉を思い出した。

 「社会人野球はほとんどがトーナメント。一発勝負なので。何回も何回もチャンスがないので、簡単に三振することはできない。1打席の中でカウントを整えて、四球をとったりすることが、すごくいい仕事になってくるので。そういうのは社会人の時にできてきたのかなと思います」

 都市対抗、日本選手権、すべてがトーナメントの一発勝負。企業名を背負って戦い、スタンドには職場の同僚が多数、応援に駆けつける。記者もアマチュア担当時代に社会人野球を取材したが、プロや高校、大学とは違う異様な緊張感がグラウンドに漂っていたのを覚えている。

 1球のポジショニング、打席の中での1球が勝敗を分ける。だからこそ大卒・社会人を経験してきた選手は、打席で粘り強く、守備でも事前の準備を怠らない。

 かつて阪神はドラフト戦略で、大学、社会人を経た24歳前後の内野手、外野手を「伸びしろがない」という電鉄本社の意向もあり、指名を見送ってきた経緯がある。16年のドラフトで糸原(明大→JX-ENEOS)を指名したのは、実に03年の庄田隆弘外野手(明大→シダックス)以来、13年ぶりのことだった。

 昨年のドラフトではドラフト1位の近本、そして木浪と2人の大卒、社会人出身のルーキーを指名。その先駆者となる糸原は昨季、チームで唯一全試合に出場し、打席での姿勢が高く評価された。厳しい戦いの中、打席で、そして守備で1球の大切さを培ってきた2人が光り輝く“野球脳”を見せれば-。トラのドラフト戦略は大きく変わっていくかもしれない。(デイリースポーツ・重松健三)

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