【スポーツ】納谷4場所目でプロの壁 祖父も経験した幕下での負け越しを成長の糧に

 大相撲秋場所(23日千秋楽、両国国技館)で“昭和の大横綱”大鵬(故人)の孫で元関脇貴闘力の三男・幕下の納谷(18)=大嶽=がプロの壁にぶち当たった。3勝4敗で初の負け越し、来場所、九州場所(11月11日初日、福岡国際センター)で三段目に落ちることが確実となった。

 幕内では全勝優勝した白鵬(宮城野)と進退の懸かる稀勢の里(田子ノ浦)が横綱同士で初対決した注目の13日目。幕下でも永遠のライバル同士の大一番が行われていた。

 最終七番相撲、納谷は元横綱朝青龍のおい、豊昇龍(19)=立浪=を迎えた。高校時代からのライバルでプロ入り後は2戦2勝。アマチュアを含めれば3連勝していた。星数はともに3勝3敗の五分。勝った方が幕下に生き残るプライドを懸けた戦いだった。

 立ち合いは踏み込みよく押し込んだ納谷だったが攻め切れない。首に腕を巻かれ、捨て身の投げに体が一回転。166キロがゴロンと土俵に転がった。

 首投げに屈し4敗目角界入り後初の負け越し。今年春場所で序ノ口を7戦全勝し優勝。序二段、三段目とともに6勝1敗で通過してきたが、4場所目で勝ち越しが途切れた。

 「前に出ようと思った。上半身だけで攻めたかなと思う」と悔やんだ。大横綱のDNA対決に初めて敗れた。初の幕下での7番を「勝たないといけないところで負けた。もっと力を出せたかな」と、さすがにショックは隠せなかった。

 埼玉栄高では3年時、全国高校選抜大会を制し、国体の少年では個人と団体で優勝。祖父譲りの恵まれた体格で世代のトップを走るサラブレッドの出世が足踏み。三段目までは馬力ある突き押しで立ち合いから一気に持って行く相撲で圧倒したが幕下では簡単には押し切れないのが、苦戦した最大の要因だ。

 負けた相撲は押し切れず脇の甘さを突かれて差され、そのまま上体が起き、逆転を食うのがパターン。「自分の問題。相手の圧力が強くなったとかじゃない。自分がただ全然ダメなだけ」と強がるが高校王者でも甘くないのが幕下のレベルだ。

 2敗目を喫した6日目は父から電話があった。「いらいらする。気の抜けた顔しやがって」と怒られた。埼玉栄高の恩師、山田道紀監督からも電話で「お前の形じゃない」と説教された。「やってやるという気持ちになった」と目が覚めたが、あと1勝が遠かった。

 師匠の大嶽親方(元十両大竜)は「押していくのが信条だけど簡単に押させてくれないから、(相手の差し手を)抱えて強引に投げ。そうじゃないよ、相撲というのは」と、自分の相撲を見失っていることを指摘する。

 十両に上がればお相撲さんとして一人前とされる世界。幕下は十両をすぐ上に見ながら、120人もの力士が“狭き門”を懸けてしのぎを削っている。一番の勝ち負けが人生を左右する。親方は場所前から「幕下は今までとは違う。今までと同じなら勝てないよ」と言ってきたが、やはり不安は的中した。

 親方はしかし前向きに考えている。「18歳の子供だもん。悩んだり、稽古場で試したり、開き直ったり。これもプロ。自分の相撲がどうなのか考えて。腰が高い、立ち合いが弱いというのを本人もよく分かっていると思う。発展途上なんだから。いろんな経験をして将来、勝つための負けとプラスにしていくしかない」。

 60年前、1958年の秋場所で祖父・大鵬も幕下で初の負け越しを経験している。「しっかり自分の体を生かしていきたい。(負け越しを)ちゃんと自分で受け止めてこういうことがないようにいきたい」と納谷。より大きく飛ぶための糧にするしかない。(デイリースポーツ・荒木 司)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

オピニオンD最新ニュース

もっとみる

    ランキング

    主要ニュース

    リアルタイムランキング

    写真

    話題の写真ランキング

    注目トピックス