【スポーツ】元関学大QBが見た悪質タックル問題 許されぬ「故意」と危険性

 6日に東京都内で行われた定期戦で、パスを投げ終えた関学大選手に背後からタックルする日大の選手(右端)(関学大提供・背番号をモザイク加工しています)
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 6日に行われたアメリカンフットボール(以下、アメフット)の関学大と日大との定期戦で、日大の守備選手による悪質な反則行為が波紋を広げている。今回の何が危険で問題だったのか。デイリースポーツ編集部で元関学大アメリカンフットボール部クオーターバック(QB)の藤吉裕久が語る。

  ◇  ◇

 今回の日大のラフプレー問題で、アメフットは危険だから、危ないからとチームに友人を勧誘してて良く耳にしたことを思い出した。確かにアメフットは危険なスポーツだ。だからこそ、人一倍の食事をして体を大きくし、全体練習が終了してから夜遅くまで筋トレ室にこもり、自らの体を鍛える。鍛えなければけがをすると分かっているから。

 鍛え上げた巨体の男たちが全力でぶつかり合うのだから、当然「危険なプレー」は日常茶飯事で起きる。ボールを両手で抱えたランナーが頭から地面に叩きつけられる、ボールを追っているレシーバーが正面から激しいタックルを受けて吹っ飛ぶ、無防備な背後からブロックを受けるなど、上げればキリがない。しかし、当の本人は周りの心配をあざ笑うかのようにケロっとしているのだ。そう、鍛えた体とプレーへの緊張感が男たちを守っているのだ。

 今回のプレーで一番重要な点は明らかにプレーが終了していること。パスを投げた後のQBは、言い方は悪いが、もう仕事を終えて戦況を見る傍観者といっていいほど無防備になっている。この点は、経験者であれば知っていて当然のことであるからこそ、反則を犯した場合は一番罰則の重い15ヤード罰退なのだ。

 悲しいことに、今回のプレーは明らかに故意であると感じる。試合中など、仲間同士で「やってこい」「倒してこい」など“野蛮な男たち”が声を荒げ、互いを鼓舞し、正々堂々と正面からぶつかり合う。だからこそ見ていて気持ちがいいし応援したくなる。試合後には対戦したチームメートと談笑し合ったり、アドバイスをもらったりする姿が微笑ましい。

 相手にケガをさせてやろうという「故意」に見えたから、怒りがこみ上げ、許しがたい行為だと非難したくなる。対戦相手への敬意もまったく感じられない。不幸中の幸いで関学の選手は大事に至らなかったようだが、最悪あの状況だと下半身不随になってもおかしくないようなタックルだったのは間違いない。

 確かに被害にあったのは関学であるが、結果的に見ると、まじめに毎日やっている日大のほかの選手たちのほうが心配になる。どちらにせよ、今回プレーは許し難い事実である。連盟や監督、コーチが教育を徹底しもう二度と起こしてはならない。

 最後に高校、大学とアメフットを経験した者としてお伝えしたい。周りから見ると巨体の男たちが群がる怖そうなスポーツに見えるかもしれないが、私が過ごした時間には暴力、イジメなど一切無かった。監督、コーチを含め、むしろ教育が徹底された紳士の集団であったと自負している。今回の騒動でアメフットをやろうとする子どもたちが、怖いからやめておこうと思われるのが一番悲しい。たくさんのスポーツを経験した私にとって一番おもしろかったのは「アメリカンフットボール」だったのだから。

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