【野球】「おじぃーの為に」全力で戦った甲子園 松山聖陵・真栄城主将の春

 近江戦の1回、右前打を放つ松山聖陵・真栄城=3月28日、甲子園
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 大阪桐蔭が史上3校目となる連覇を達成して幕を閉じた今年のセンバツ。史上最多7試合がサヨナラ決着となるなど、第90回記念大会は熱戦の連続で大いに盛り上がった。

 選手たちにとって、甲子園は夢の舞台。小さいころから厳しい練習を続けてきただけに、並々ならぬ決意で試合に臨む。そして、その熱い思いを帽子のひさしの裏に記している球児は多い。「日本一」「感謝」「平常心」「弱気は最大の敵」…。それぞれの目標や座右の銘が見られる中、松山聖陵(愛媛)の主将・真栄城隆広内野手(3年)の帽子にはマジックで力強く「おじぃーの為に」と書かれていた。

 その意味を試合前にたずねると、こんな答えが返ってきた。

 「亡くなった祖父に甲子園に行くと約束していました。どこかで見てくれていると思うので、いいプレーを見せたい」

 真栄城主将は沖縄・那覇市出身。1999年に沖縄尚学の内野手としてセンバツ優勝した荷川取秀明監督(36)の指導を受けるために愛媛の高校を選び、寮生活を送りながら練習に打ち込んでいる。

 大好きだった祖父・具志堅稔さんが他界したのは、高校入学直後の一昨年5月5日。パーキンソン病を患い、寝たきりの闘病生活の末に73歳で亡くなった。宜野湾市に自宅があり、野球が好きで、毎年冬にはDeNAやヤクルトなどのキャンプやオープン戦に連れて行ってくれた。少年野球の試合にも応援に来てくれた。その優しい祖父と、「絶対に甲子園に行く」と約束していた。

 近江(滋賀)を相手に戦った初戦。「1番・三塁」でスタメン出場した真栄城主将は、初回にいきなり右前打を放ったが、二回の第2打席は2死一、三塁のチャンスで捕邪飛。4打数1安打に終わり、チームも5-8で敗れた。「ふがいないバッティングをしてしまった。祖父に怒られると思います」。試合後、真栄城主将は悔しがった。

 チームの甲子園初勝利はお預けとなった。ただ、チャンスはまだ残っている。俊足と巧みな打撃に磨きをかけて目指す最後の夏。「絶対にここに戻ってきて、祖父に成長した姿を見せたい」。帽子を真っすぐにかぶり直し、真栄城主将は甲子園をあとにした。(デイリースポーツ・浜村博文)

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