【野球】中日松坂に「松坂世代」の盟友がエール 楽天平石ヘッド「ずっと頑張って」

 復活をかける盟友のマウンドに、密かに胸を熱くした人がいた。4日、ナゴヤドームでのオープン戦に登板した中日・松坂大輔投手(37)を、敵ベンチから見つめた楽天・平石洋介ヘッドコーチ兼打撃コーチ(37)だ。

 同コーチは言わずと知れた「松坂世代」の1人。PL学園時代はキャプテンを務め、98年夏の甲子園で松坂を擁した横浜高と延長十七回の死闘を繰り広げたのは、あまりに有名だ。大熱戦の末に怪物の前に敗れたが、今なお、球史に残る伝説の一戦として語り継がれている。名門PLの主将だった平石ヘッドにとって、松坂はいわば宿敵であり、永遠の盟友でもある。

 登板前日の3日にはは、メールのやり取りも交わした2人。試合後、同ヘッドは端正なマスクを崩し声を弾ませた。「めちゃくちゃうれしかったです。大輔がああやって投げているのは」-。

 松坂は2回を投げ2失点、1奪三振、1被本塁打。最速は144キロ。今の時点で、復活への第一歩を刻んだと言って良いだろう。平石ヘッドは続けた。「長く現役をやっていると、ずっと同じスタイルで投げるのは難しくなる。でも、大輔はケガもあって、それでもあきらめずにもう1度投げて子どもたちに野球をやっているのを見せたいという気持ちでやっていて…。どんなスタイルでも、チームは違うけど、もう1度大輔がすごいなっていうのを見せて欲しいと思っている。今、大輔と対戦したことがない現役選手が多くなったと思うから」。

 普段はクールな若き参謀が、この日は熱かった。今年で38歳。たとえ、かつてのように150キロを超える剛速球を投げられなくとも、現役にこだわり続け、希望であり続ける、それができるのが松坂。一大勢力の松坂世代の中でも、特に高校時代から打倒怪物を掲げ汗を流してきた平石ヘッドにとっては、ライバルのマウンドには心揺さぶられるものがあった。

 だからこそ、ベンチでは松坂“攻略”を徹底指示した。二回1死、右前打を放ち出塁した今江は、松坂のモーションのスキを突き、次打者・岡島の3球目で二盗を成功。なおも岡島の浅い左飛で、左翼・アルモンテの緩慢な返球を見逃さず、すかさずタッチアップを敢行、三塁を陥れた。これは平石ヘッドの“タクト”だった。「大輔に、楽天のイメージを嫌やなって思わしたくて、走者が出たらスキををついて走らせようと思っていました。そしたら今江が走ってくれて」。復活を期す松坂と、ひと足早く指導者への道を歩み、コーチとしてベンチを統括する平石ヘッド。立場は違えど、再び同じ戦いの場に立てたことを喜び、プロとしての矜持で応えた。

 「『松坂世代』の1人としては、やっぱり大輔にずっと頑張ってほしいし、引っ張ってほしいなと思います。だって、今日みたいに、あんなに球場の雰囲気を変えられる人って、なかなかいないでしょう。偉そうに言えないけど、勝負できそうだな、そう思いました。きょうは本当にいい時間でした」。平石ヘッドは、どこか誇らしげにほほえんだ。(デイリースポーツ・福岡香奈)

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